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Soul Generation / Beyond Body And Soul 1972 ソウル・ジェネレーション

名盤の雰囲気漂うジャケ、1970年代前半のグループ唯一の作品

ハイトーン・ヴォイス屈指のメロウ・ファルセッター、クリフ・パーキンスを中心とした4人ヴォーカル・グループのソウル・ジェネレーションの1972年リリース作品。

レコード会社の売り込みに苦労が実らず辿り着いた結論

コーラス・グループ最高峰を目指し、「需要は自ら作る」という決意の末
エボニー・サウンズ・レコーズという自主レーベルを設立した。

遠方ではあるが、西海岸のファーストコール・ミュージシャンを起用する。
ピアノでジョー・サンプル、ベースにチャック・レイニー、ドラムにポール・ハンフリー。演奏者のクレジットで即買いレベルのミュージシャンで完全体制を整える。

モノクロのアルバムアートにマッチし、1970年代前半の独特の音の完成度の高さ。歌と演奏など発見が多い作品。

曲目

Super Fine
In Your Way
Wait So Long
Ray of Hope
Million Dollars
Sailing
Young Blood
Black Man
Sweet Thing
Thats the Way it's Got to Be (Body & Soul)

曲目感想

Super Fine
左チャンネルから抑制されたワウ・ペダルのギターのカッティングから始まり、ほどなく右チャンネルに一つに音をまとめた管楽器が入る。そして演奏のカギを握るポール・ハンフリーのドラムスとチャック・レイニーのベースの絡まり具合、うねって、巻いたようなグルーブが初手からもうアレで心地良い。

曲名からしてだが、曲の感じも歌い方もカーティス・メイフィールドを思い起こさせるナンバー。

In Your Way
ミディアム・スローの曲で、このテンポが一番本領発揮出来そうだ。
メロウ・ファルセッター、クリフ・パーキンスが先に弾き始めるピアノに上手く誘導される様に気持ち良く歌う。少しずつ侵食していくホーン・セクションがごく控え目に鳴動する。
「メロウ」が溶けるかのように計算されたこの流れ。。身を任せてこのまま聴いていきたいところだが、短尺でフェイドアウトしていくお腹一杯にはさせない戦略だ。

Wait So Long
この曲も前曲とテイストは違うミディアム・スローで聴き手を攻めて来る。もう敵(リスナー)は完落ちしている。。
演奏は徹底的に抑制させ、それに対して引き立ち、とても声が良く通るクリフのファルセットが全体の割合を占める。
「伸び伸びして澄んでとても歌上手いな」と感心する頃にフェイドアウトされていく。。

Ray of Hope
1969年の白人グループのラスカルズのカバー。ラスカルズのフェリックス・キャバリエの歌も屈指のホワイト・ソウルぶりだが、それに対して歌も演奏もわざと正面から挑んでる気がする。
全員のコーラスが華麗に、支えるリズム隊の音圧と音量と抑制の的確ぶりさが合わさる極上感。
サビの伸びやかな歌に入るホーン・セクションの配列具合、この音が見事に構築されている。

Million Dollars
まだまだ飽きの来ないミディアムテンポのバラード。
ドラムがリムショットで抑制されているがホーンセクションが入ると同時にドラムも歌っているかのような、歌心が非常に伝わり美しいファルセットコーラスと並行に聴こえる感じがする。この全体の音の構成と展開を分析、感心してる間にここもフェイドアウト。。

Sailing
タイトルになぞられてこの曲の所感は「そよ風に誘われる颯爽感」。
ストリングスの弦楽器と管楽器と伸びるファルセットボイスとの混然一体感は何であろう。
南部のソウルにもないし、躍動感溢れるモータウンとも違う。振り切った上品さだけど鼻につかない、ニューソウルとはこういうことなのかも知れない。ストレートに歌手と演奏者たちの気持ち良さが伝わる。

Young Blood
クラリネットから始まり、甘美な空気と彼らの爽快な空気が絶妙に配合されている。それに難なく合わせて行くスタジオ・ミュージシャンの職人ぶり。
ポール・ハンフリーのドラムのテンポあるドラムのフィルの入れ加減とか曲を把握している。
この曲はフェイド・アウトしないので聴いてて着地した感覚がとてもする。

Black Man
この曲はモータウンのテンプテーションズのテイストを冒頭から感じる。ドラムをはっきりとビートを刻みテンポも作中で一番早い曲。
左右チャンネル分かれてボーカルが掛け合っていく。自然と耳が左右に追っかけて行く。同時にドラム、ベース、ピアノ、管楽器の混在具合も聴きとって感心し聴き惚れる。この絶妙さをどの角度からも味わえるのが素晴らしい。

Sweet Thing
ジョー・サンプルの演奏と歌に寄り添った生のピアノも良く響いている。
ここもポール・ハンフリーのドラムの抑制され、筋肉質なドラム、とチャックレイニーのリズム隊の完全に歌を支えるバックアップ体制が良い。

ホーンセクションも音圧がありキレを感じる。メインのファルセットボーカルとバックボーカルの掛け合い具合、管楽器と弦楽器の出るタイミングや配置やら絶妙な加減を感心しながら聴き、そろそろ慣れてきたフェイドアウト。。

Thats the Way it's Got to Be (Body & Soul)
第1弾シングル曲。この曲だけ先行して制作されたのかアルバムの統一感が欠けている音の配置になっている。ボーカルが1つに集約されて、ドラムが奥に行って、そのせいかグルーブが異なっている。音が塊になって聴こえる。この後から続いていく曲は試行錯誤してミックスが完成されていくという過程が分かる。

総論
デビュー叶わず、自らレーベルを興してリリースにこぎ着け、背水の陣を敷く。わざわざ遠方から自分たちの音楽を理解し、具現化できるスタジオ・ミュージシャンを呼び本気の勝負に出る。立ち上げの資金、ミュージシャンの人件費など様々な費用が出ていく。

ポール・カイザーとスタン・ヴィンセントが限られた予算と時間の制限一杯活用するために自らは手弁当で不眠・不休でやり遂げていく。
録音、ミックスとマスタリングを細部に至るまで構築した執念が作品の音に伝わる。

3分台と聴きやすい曲にまとめたのは、制作時間と費用の制限もあるかもしれないが、ラジオで聴くとしっくり来るミックスにさせて、加えて短い時間でローテーションの機会をなるべく多くして収益化と宣伝プロモーションを狙ったのではないだろうか。

ボーカルと楽器演奏が分業にも関わらず混然一体と同じ方向に向かって展開していく模様が、奇跡的で極上に美しい。

ジャケットの即買い、即聴レベル。
1970年前半の珠玉のメローサウンドの隠れた名盤。


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