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三塁側からの新鮮な景色を見ながら、おじさんたちと若手たちを想う 【3/3オープン戦 巨人○】

カツオさんはあっちを向いて投げ、じゅりはこっちを向いて投げる。てっぱちはあっちを向いて打ち、ぐっちはこっちを向いて打つ。「三塁側からの景色」は新鮮だ。

外野寄りの三塁側内野席に座っていると、いつの間にか荒木が目の前でレフトを守っていた。いつのまにかまた、ユニフォームが泥だらけになっている。荒木はどこでも、本当にどこでも守るのだ。

高梨くんは、新しいユニフォームに身を包み、「こっちを向いて」投げ続ける。今年もやっぱり大変こわい阿部慎之助に打たれたって、そのあとをしっかり押さえる。なんといっても、サヨナラされなかっただけで充分だ。ノーモアサヨナラ。

なおみちと村上くんが、三塁近くで話している。一軍のグラウンドで、東京ドームで。去年は、一軍にずっといたなおみちと二軍にずっといた村上くんが、一緒にいるところはほとんど見たことがなかった。だけどこのオフで、松山や、浦添や、そしてロスで、一緒にトレーニングを積み、謎の(いや謎じゃないけど)お鍋を作り、ぐんと、ぐんと距離が近づいた。これからきっと、三塁側から見る景色には、村上くんがとなおみちが並ぶところを、たくさん見ることになるのだろう。

見慣れない三塁側からの景色を見ながら、そんな色々を、私は思う。

だけど忘れちゃいけないのだ。開始早々、粘った末に苦手なメルセデスからしっかりヒットを打って、早速ノーノーを阻止したぐっちがいた。負けじとヒットを重ねるてっぱちがいて、そしてゲッツーかと思いきやヒットを打って満塁にしてくれた雄平がいた。おじさんたちとスターが重ねたそのヒットを、そうして作ったチャンスを、若い塩見はしっかり生かした。

そして、さくさくと巨人打線を抑えていく、たまに現れしスーパーバージョンのカツオさんがいた。カツオさんがさくさく打ち取ってくれた表の攻撃で、村上くんが打ち、なおみちが打ち、てっぱちが打った。おじさんたちは若者たちには負けじと、でもしっかりお膳立てをしながら、打ち、投げ続けた。若手たちがのびのびと打つその裏に、おじさんたちがちゃんといた。

そしてその空気の中、たいしはでっかい2ランを放った。打席でのたいしの佇まいが、去年とは全然違って見える。急に頼りになり始めたたいしのその存在感がうれしくて、私はひたすらウーロンハイを飲む。東京ドームにはビールじゃなくてウーロンハイが合うのだ。

たいしは今年から、ファーストも守る。ぐっちが去年から守り始めた、ファーストを。

やるなら思いっきりやれ、がんばれたいし、と思う。ウーロンハイを飲む。一方で、しっぶいヒットを打ち続けてくれるぐっちに、96敗したって打ち続けてくれたぐっちに、34歳でファーストに挑戦してくれたぐっちに、まだまだそこにいてくださいと思う。まだ走っていて、まだもうすこし、夢を見させてください。

今日の試合のように、おじさんたちがヒットを積み重ね、アウトを積み重ね、お膳立てをし、若手たちがでっかいのを打つ。そうやって、少しずつ、いろんなものが移り変わって、何かを手渡してゆくのかもしれない。それは理想的な引き継ぎ方かもしれない。でもそれはもう少しだけ、もう少しだけあとで良い。おじさんたちはきっとまだ、センチメンタルになっている場合なんかじゃない。まだまだもう少し、頑張っていてほしい。きっと、きっとまだやってくれる。

なんで野球は九人なんだ。なんで内野は四人しかいないんだ。と思う。でも、そのたった九人を目指して、内野は四人を目指して、競争をしながら、共に戦ってゆく。競争と協業が共存する。不思議なその世界で。

そこには希望も切なさも全部つまっている。私はただただスタンドに座って、がんばれがんばれと手を合わせる。

またこうして毎日みたいに気持ちの忙しくなる日々が始まるのだな、と思いながら。

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