見出し画像

エースはそこで、孤独と戦いながら投げ続ける【6/19ソフトバンク戦○】

いつもなら絶対にここでしていた失点を、踏ん張れなかった局面を、なんとか、なんとか踏みとどまって、最後まで守り抜いた。何度も何度も、「これはいつものやつ…」という悪い記憶が思い浮かんでは、それを乗り越えた。それは何とか、何とかつかみとった、大切な一勝だ。

競り勝つことができなかった。そこで踏みとどまることができなかった。作戦は、継投は、いちいち裏目に出た。でも今日は、とにかく踏みとどまることができた。みんななんとか、なんとか耐え続けた。エラーをしても、チャンスで点が取れなくても、折れることなく。

ライアンが勝てなくて、本当に勝てなくて、イニングの途中で、マウンドを降りることだってあった。でも田畑さんは「それでも投げさせる」と言った。素人の目から見ると、ライアンに必要なのは休息なんじゃないのだろうか、という気だってしてしまっていた。

でもライアンは、今日、しっかり投げてくれた。そして二勝目をあげた。あらゆる不安を、こちらの勝手に抱く不安を、打ち砕くように。

プロにはプロの、仕事があるのだ。見ているこちらからは、伺い知れないような。

私はもちろん自分の人生でエースなんて呼ばれたことはないし、自慢じゃないけど何かで一番になったような記憶もさっぱりない。だからそう呼ばれる人のその苦労は、プレッシャーは、そして孤独は、想像することも難しい。

でももしかすると、そこでうまくいかないともがくことは、下から上に上がっていくことよりずっと大変なことなのかもしれない。守るものができると人は、臆病になるものだ。それを失うことの怖さを抱えながら、一人そこに立ち続けることは、きっとものすごく孤独なことだ。

だからこそ、王者に君臨し続けるソフトバンクやカープやっぱりすごい。それは、最下位のチームが上に這い上がっていくことよりも、本当は難しいのかもしれない。それはやっぱり、敬意を払うべき功績だ。

でも、それでもソフトバンクやカープはチームとしてそこに立ち続けることができる。誰かの不調を、補い合っていくことができる。

だけどピッチャーはそこで、一人で投げ続けなきゃいけない。ライアンは「エース」の称号を、一人で背負い、そして勝てない時にはその批判を一人で受け止めなきゃいけない。

ライアンは今日、お立ち台で、「長い間迷惑をかけていたんで、ここの上がるのも恥ずかしいですけど」と言った。その言葉が、ライアンの背負うものの重さを、ライアンにのしかかっていたプレッシャーを、表している気がした。

そのプレッシャーと戦いながら、批判も全て受け止めながら、ライアンはそこで投げ続けなきゃいけない。チームが勝つ時も、負ける時も。誰かがミスをする時も、自分の球がうまく投げられない時も。

それは途方もない日々だろうけれど、ライアンがそこに立ち続ける限り、見ているこちらは祈り続けたいなと思う。ライアンが今日の一勝でまた何かをつかみ、戦い続けてくれることを。そしてチームが良い流れに乗っていけることを。

がんばれ、がんばれ、と、そっと。

ありがとうございます…! いただいたサポートは、ヤクルトスワローズへのお布施になります! いつも読んでいただき、ありがとうございます!