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オケラ大捕物帖

【昆虫エッセイ】
オケラ。
そう、あの『アメンボだぁーってぇぇー』でおなじみの、オケラ。

どんな姿かご存知だろうか?

私が初めて生オケラに出会ったのは、今から7年前。

⬇その時の写真

それ以降、会いたくて、私の心が、身体が、どんなにオケラを欲しても、出会うことは叶わなかった。

普段土の奥深くにいるから、田起こしのとき以外では、なかなか見かけることはない。

しかし、このときばかりは違った。

これは、私一人とオケラ一匹による大捕物帖。
それは熾烈を極めた戦いだった…

あれは “オケラエクササイズ🤼”と言ってもいいのではないか、とさえ思えてくる。

川原で大人しく読書中の私のすぐ脇を、突然何かが横切った。

4、5cmはありそうな茶色いなにか。

すっかり鈍麻した動体視力を駆使して、目を向けると、すごいスピードで駆け抜けるオケラの姿が目に飛び込んだ。

本をぶん投げ、荷物そっちのけで追いかける。

追いついても追いついてもその度に逃げられる。
彼には、スマホのシャッタースピードに合わせてあげようなんて考えはないようだ。

石段を登り、下り、もぐり、走る。
私も続いて、登り、下り、もぐりはしないけど、走る、というか這いずり回る。

手の平で壁を作ってみるが、オケラはモグラのような手を駆使して私の手のひらをカリカリカリカリくすぐるので、あまりのこそばゆさに手を離してしまう。

『やられた…!!』

靴で行く手を阻んでみるが、やつのエビのような頭は土踏まずとアスファルトの微妙なスペースをかいくぐり、まんまと逃げられる。

オシッコを究極に我慢している時のように足と足をこすり合わせ、『いかなるスペースも与えんぞ!』と下腹部に力を入れたところで、撮らせるまでは帰れないことを悟ったのか、突然アスファルトの真ん中で動きを止めた。

『イマノウチニ ドウゾ📸』

嫌がる女子を追い回している悪徳カメラマンのようで罪悪感が胸をかすめたが、こんなチャンスはなかなか訪れないので遠慮なく色んな方向から撮らせてもらった。

私の息はこんなにも上がってるのに、オケラはなんとも涼しそうな顔だ。

あぁ、疲れた。

この必死な姿を誰にも見られず一人きりで本当に良かった。

【オケラ豆知識】
オケラは、みんな大好きバッタ目。
コオロギの仲間だ。
翅を使って飛ぶ、モグラのような手で土を掘る、水の中を泳ぐ、コオロギのようにジャンプする、超高速で走る(人間換算60km/h)となんともハイブリッドな昆虫である。

みんなみんな、生きているのだ。

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