蛙の子は蛙、母の子はわたし。
数年前、母にスマホをプレゼントした。
山の上の一軒家に一人暮らしをしている母の安否確認のため、というのが第一の理由だったのだけれど、それまでガラケーさえ所持したことのない母にスマホのA to Zを教えるのは、それはそれは大変な一大事であった。
何しろ、最近のスマホにはトリセツさえついていない。
電源の入れ方、電話のかけ方、文字の打ち方、LINEの開き方、写真の撮り方とその見方と送り方…などなど、イラスト入りの手書きトリセツを自作し、それを見せながら何度も練習した。
今では、母なりにだいぶ使いこなせるようになったようで、Googleの音声検索を使って料理のレシピや調べ物までこなしているらしい。
朝起きると、たいていLINEにメッセージが入っている(彼女は午前4時には起床する)。
おはよう!とか、仕事頑張ってね!とか、畑のトマトが採れすぎて困ってる!とか、猫がネズミ捕まえてきた!とか、猫がカナヘビ捕まえて遊んでる!とか、裏の畑にエゾシカが出た!とか、家の中にスズメバチが10匹くらい入ってきて困る!とか。
メッセージには写真が一緒に添えられていることも多く、大抵は母の育てた花や野菜、猫のイキイキとした姿が写されている。
「大抵は」と言ったが、送られてくる写真の2枚に1枚、つまり半分は虫や爬虫類である。
なにか蠢くものを見つけると、写真を撮らずにはいられないらしい。
先日は、畑を走るエゾマイマイカブリを初めて見たようで、スマホを帯同していなかったことを「あんな大きくて茄子みたいにきれいな虫、撮り逃がしたのが悔しい、惜しいことした」と何度も嘆いていた。
つまりは、父親が野良仕事をする間、野山に放牧されて育った母は生き物が大好きで、私の生き物好きは母のDNAをそのまま引き継いだと言って間違いないだろう。
前置きが長くなったが、今日は母が送ってくれた写真をご紹介したいと思う。
時々、奇跡的に素晴らしい写真が送られてくることもあるが、基本、対象物にピントが合うことは稀で、フレームアウトしていることもしばしば。
しかし娘の私からすると、機械オンチの母が写真を撮ってLINEに添付し送れるようになったこと自体、奇跡のように思えるのである。
一緒に送られてきたメッセージとともにどうぞ。
頭から蝉。
叫ぶ母。
コップをかっぱがし(ひっくり返し)逃げ惑う猫。
これが我が家の日常。
蛙の子は蛙。
母の子はわたし。
わたしは、間違いなく母の子だ。
毎朝のLINEと、毎夕の仕事後に地下鉄まで歩きながら話す5分の通話で「生き物(人間含む)談義」をするのがお互い楽しみな似たもの親子なのである。
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