昆虫殺戮兵器搭載の母
【昆虫エッセイ】
カメラを持っていないので、スマホのマクロ撮影機能を使って写真を撮っている。
ある程度スマホを被写体に接近させなければならず、そぉっと近づいても気づかれたり、モタモタしている間に逃げられてしまうことは日常茶飯事だ。
特に、パタパタを止めてくれない蝶は難関中の難関だ。
何度、ひらひら飛び回る蝶に同じところを目が回りそうになるまでぐるぐる回らされたことか。
何度、止まっているところをシメシメ顔で近づいて、シャッターを押す0.1秒前に飛び立たれてしまったことか。
悔しさの全てをゾウムシを探すことにぶつけ昆虫探索をしてきたが、そんな私にもチャンスが訪れた。
迷い蝶だ!
玄関に迷い蝶が舞い込んできたのだ。
『母よ!蝶が入ってきたぞ!』
喜びの声を上げると、
『やだ、気持ち悪い(でた、母の必殺“気持ち悪い”)』
と母はティッシュに手をかけた。
ハハァ〜ン…さては殺る気だな…
何を隠そう、母には
“昆虫殺戮兵器が搭載されている”
のだ。
菜園やガーデニングを趣味とする母にとって、害虫は天敵。
母の手にかかれば、毒毛虫、カメムシ、ハムシ、ゾウムシなどはひとたまりもない。
こと、毛虫に至っては、一箇所に大量に集められ、すりこぎ代わりの石ですり潰される運命にある。
毛虫の延長線上にある蛾も、母が毛嫌い(毛虫だけにね‼️)している昆虫の一つだ。
母の頭には蝶も蛾もない。
キアゲハの1~3幼齢の幼虫も、これまで母が手にかけてきたことが今回発覚した。
『待って…!お願いだから、殺さないで!ほら!かわいいよ!顔見てみて!』
『やだよ、気持ち悪い。お母さんね、毛が生えてたりするのゾワッとするの。』
同意が得られなかったため、なんとか私の手で救出することにした。
窓ガラスに止まったかわい子ちゃんの前に指を差し出すと、我が家の事情を知ってか知らずか、躊躇うことなくスッと乗った。
そのまま外へ行き、無事ミッション終了…前にもちろん写真を撮らせてもらった。
こんなにゆったりとした気持ちで蝶の写真を撮ったことがあっただろうか。
いつも蝶を前にすると気が急いてしまい、アタフタ、ワラワラしてしまっていたが、今回はしばらく二人きりの時間を楽しめた。
小さいが、可愛いではないか。
色味は地味だが、いい色出してるよ!
空に手を向けると、そのまま元気に飛び立っていった。
コチャバネセセリさん、さようなら。
My First 蝶の正面顔写真、ありがとう。
撮影したあとの写真を、母に少しでも蝶を好きになってもらいたいという期待を込めて見せた。
『あぁぁぁ〜😧気持ち悪い😧毛生えてる…』
道のりはまだ遠い。
※今回の帰省で、ゾウムシとキアゲハ幼虫の可愛さの刷り込みには成功しました。
彼らは殺戮兵器の的になることはない…と信じています。
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