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2022年の猿之助さんⅢ

振り返りも大詰です。

8月は恒例の「納涼歌舞伎」が帰ってきました。と同時に弥次喜多も帰ってきました。鬱々とした疫病禍、どんなにこの二人に会いたかったことか。お芝居で心の底から笑いたい、そう願い続けていました。

過去4年連続で弥次喜多を務めた幸四郎さん猿之助さん。毎年新作を生み出し楽しませてくれました。染五郎くん團子くんも皆勤賞。彼らの成長も弥次喜多のお楽しみ。今年は最高の夏になる予感でワクワクしていました。

猿之助さんはもう一つ、お家芸の「浮世風呂」も踊りました。これは銭湯の三助さんが’なめくじ’ちゃんに惚れられるストーリー。猿之助さんは亀治郎時代はなめくじを演じてきましたが、今回は團子くんが初役で踊りました。世代交代です。ヒョイヒョイ軽快に働く様子が踊りになり、猿之助さんの真骨頂と言っても過言ではないくらい。露出度高いビジュアルも夏にぴったりでした。

順調にスタートした歌舞伎座でしたが、やはり感染者が出てしまう事態になりました。しかも主役級の皆様が。。

先月のように打ち切りになってしまうのか。。そう悲しかったところに次々と幕が開いていったのです!歌舞伎は普段から代役文化があり、演じたことがあろうがなかろうが指名されれば演じるのです。詳しくはわからないけど、私の観劇歴の中でも、疫病禍前は休演は1回くらい(海老蔵さんが声が出なくなった時)しか覚えがないです。

感染病なので検査結果が出るまでの1~2日は仕方がないのですが、この月はすぐに幕を開けました。第一部では、歌之助くん福之助くんの代わりに中村屋兄弟が急きょ出演しました。

第二部では濃厚接触者になってしまった幸四郎さんの代役を猿之助さんが。「安政奇聞佃夜嵐」は40年以上も上演がなく、しかも猿之助さんは元の出演者ではありません。本人がストーリーズで書いていたとおり、前日に話がきたそう。そこから膨大な量のセリフを入れて次の日に本番。断る選択肢はなかったと言っていました。この方は神か!と思ってしまう。

第三部の弥次喜多では、幸四郎さん染五郎くん團子くんが休演。主要キャスト4人のうち3人がいない!これはさすがに無理でしょう。。と思ったら中止は1回だけで、2日目から青虎さん猿弥さん隼人さんが代役で幕を開けました。

澤瀉屋は先代の頃からWキャスト制に慣れていることもあり、さすがのチームワークで乗り切りました。幸四郎さんがいち早く戻ってきた時に、染五郎くんの代役をしている猿弥さんを見て笑っちゃってたのが印象的です。

一部から三部の代役劇が評判になり、歌舞伎座は盛況になりました。ピンチをチャンスに変えた猿之助さん方に感動が止まりませんでした。「必ず幕を開ける」お客に対してなのか、世の中になのか、疫病に対してなのか。。決意表明だったと思うのです。

千穐楽。ほぼ満席の客席でした。カーテンコールの万来の拍手は、お客全員で幸せを分かち合っているような温かなものでした。幸四郎さん猿之助さんの感動している表情は忘れません。歌舞伎の底力を見ることができ、それまで中止になった数々の公演が少し報われたような気持ちになりました。

そして9月は二つの公演を遠征して楽しみました。まずは京都春秋座「市川猿之助 春秋座特別舞踊公演」弘太郎さんが青虎を襲名して初、團子くんが春秋座初、ということでお披露目の口上もありました。猿之助さんと三人で並んだ姿は胸アツ。中央にいる青虎さんが、猿之助さんと團子くんの架け橋となるのだなぁと感じました。また、千穐楽後に「ひとつなぎの会」も行われ、濃い一日でした。

翌週は大阪へ。4日間だけ開催された松竹座「歌舞伎特別公演」吃又の女房おとくは猿之助さんのキングオブ女房役と言っても過言ではないくらい素晴らしい。鴈治郎さんがお相手とあって、どうしても観たくて遠征しました。溢れんばかりの愛情で演じている猿之助さんに癒されました。

もう一つの演目「博奕十王」は楽しい舞踊劇。亀治郎の会や浅草歌舞伎で観たことがありました。こんなに面白かった?と思うほど笑えました。上から目線なのですが。。上手くなったなーと思うわけです。私の観る目も変わったということでしょうか。

二週連続の遠征は経験がなく、想像以上に疲れました。けど、心はホカホカ。旅をしながら歌舞伎を観ることができるなんて最高です。追いかけるのが楽しい。またこんな日々を送れるなんて幸せです。


そして10月は逆に歌舞伎座にこもる日々でした。月額制のパスポートは夢のようでした。

続きます。


aya

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