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弥次喜多流離譚 千穐楽 前編

八月納涼歌舞伎の千穐楽の幕が下りました。

幕を開ける、芝居を続ける

決意表明のような8月でした。各部が中止を経験し、代役での上演を経て、全ての部の本役が揃い千穐楽を迎えることができました。が、贔屓の役者を観ること叶わなかったファンのことを想うと「無事に」とは言えない心境です。

私もワンピース歌舞伎の時、昨年8月の猿之助さんがしばらく休演の時、劇場に行っても行っても猿之助さんがいない事実は辛かった。それでも劇場に行ったのは、戻ってくるまで微力ですがお芝居を守りたかったからです。

そして猿之助さんはこれまで経験したことをフルに活かしてきたと思います。今月、芯を務める役者さんで唯一と言ってもいいくらい元気でしたから。今までのことがよほど悔しかったのか、本当にこの方はただでは転ばない。「歌舞伎座の奇策」とまで言われてしまった代役案で中止を最小限に留めて幕を開けました。賛否両論当たり前。覚悟で幕を開けたと思う。これからはこれを「日常」にしなくてはならないと使命感を感じました。

「中止にする選択は無かった」と本人が言っていました。でもきっと、一番、無我夢中、必死だったのは猿之助さんだったろうなと。一応、人間ですから(笑)戻ってきた幸四郎さんが隣にいると優しそうな喜多さんに見え、嬉しそうでもあり安心したようでもありました。

さて、そんな荒波を乗り越えて迎えた千穐楽。感想を書き残します。私は前楽と2日続けての観劇になりました。猿之助さんが代役を始めた20日の日。いてもたってもいられないけど客席に行くことはできず。何ができるか考えて千穐楽を追加することにしました。

開演前、歌舞伎座の前が賑わっていて胸がいっぱいになりました。二階席センターで友人と観劇です。なんと!いつも空席が多い二階がほぼ埋まっているではないですか!私が追加した10日前はまだ前方が取れるほどガラガラでした。きっと私と同じ気持ちの方が多かったのではないかと思う。

幕開きの'俊寛’のパロディからわちゃわちゃムード。幸四郎さんは張り切ってボケていて、愛すべきめんどくさい系になってるし、猿之助さんはそんな幸四郎さんを突き放す(笑)大岩から皆で降りる時に幸四郎さんがつまづいたのか、足がかかってしまったのか、猿之助さんがよろけて全員でグダグダになり、怒った猿之助さんが幸四郎さんの胸ぐらをつかんで喧嘩モード。何だかドリフで面白かった(笑)

その後も、猿之助さんが幸四郎さんのセリフをわざと先に言ってしまったり、「(梵太郎の)親の教育が悪い」としつこく言って幸四郎さんを泣かせたり(うえ~んって泣いてた笑)、ちょいちょいツンデレなのですが、幸四郎さんが嬉しそうなんですよね。そういう相思相愛ぶりが、ホントにジェラシーです(笑)でもこの空気は唯一無二。

門之助さんのザブエルの二重人格キャラが面白くて、付き人さん?が前楽で大きなアフロになっていて驚いたけど、楽は倍以上の大アフロ!直視した役者さんは吹き出してました。

片岡亀蔵さんの悪役が今回の弥次喜多の絶妙なスパイスのように思います。アドリブみたいなところでは言葉を微妙に変えたりしてさすがだなぁと感動でした。あと、上手いなぁと思うのは宗之助さん。観る限り全く同じシーンはなかったのでは?と思うくらい臨機応変。代役の猿弥さん隼人さんでも安心できたのはこの方がいたから。

猿弥さんが登場すると大きな拍手。やはり皆で労いたいですよね。そして個人的に幸四郎&猿弥ペアが好きなので博打の場面も大好きでした。

染五郎くんのオリビア、團子くんのお夏は綺麗になっていきました。空白の10日間はもったいなかったと思うくらい進化していました。千穐楽は二人ともに気合が入って、特に染五郎くんのセリフに感情がすごく乗っていたのは驚きでした。

本水登場にどよめきが起こりました。初日より確実に迫力が増してきてますよね。ビニールシートも4~5列目くらいまででしょうか。初日は最前列くらいだったかと。思えば、歌舞伎座でこの規模の本水を見るのは初めてかもしれません。スーパー歌舞伎はいつも新橋演舞場なのです。今回は猿之助さん幸四郎さん中心にバシャバシャしてます。猿之助さんの動きは自由。千穐楽は誰かを放水部分に押し付けてた(笑)幕が閉まってざわつくのも久しぶり。これこれ。

さらにダンスバトルが最高でした!初日を観ているから、こんなにショーアップされていくなんて思いもよらず。演出は変わらないのに踊りの技術と表現でこんなにも面白くなるとは。

新悟さんのレディース総長シー子の竹刀を持っている姿がたまらなくかっこいい。ウエストサイドの時、威嚇されて竹刀で地面を叩くのが最高にしびれます。ソロの踊りで千穐楽にタバコを加えた海老反りを入れ、お客を湧かせました。

鷹之資くんのタカミもキャラがだんだん濃くなってきましたよね。真面目に怖い(笑)鷹之資くんの深川マンボが観たいと浮かぶくらい楽しくなる踊りでした。

玉太郎くんのオタマ。フラッグ担当でした。これは難しいのですよね。ほぼ振ってはいないけど玉太郎くんは可愛らしいのにフラッグを持つとかっこよくて素敵でした。

染五郎くん團子くんも全力で踊っているのが伝わりました。今持てる全てで舞台に立っているという熱いもの。もっと躍らせてあげたかった。

猿之助さん幸四郎さんの踊りがいつもに増して楽しく、そうそう見られない二人一緒の踊りがラストなんだなとしみじみ。他の人の踊りを見ながら拍手したりリズム取ったりしているのが可愛らしく後方の二人ばかり見ちゃいました。

群舞は観た中で一番感動的でした。とにかく人数が多く、人、人、人。弥次喜多シリーズと言えば大人数(笑)ラストは全員の’気’が塊みたいになって圧巻でした。

そして寿猿さん!92歳の宙乗り完走おめでとうございます!ワンピースの星が浜の曲を聞いたら、今後はこのシーンも思い出すのだろうな。寿猿さんのセリフも千穐楽version。私は(歌舞伎の将来を)見届けることはできるかわからないけど。。の後に、声を張って両手を上げ「いや、きっと見届けられるだろうー!」なんかもう泣けるし笑えるし、役者もお客も大拍手。

その時の猿之助さんは、目を細めながら口を開けて笑顔で拍手してた(笑)過去、数々のイタズラをしかけても難なくクリアしてきた寿猿さん。この時も猿之助さんはやられたーと思ったのではないでしょうか。

そしてゴンドラの宙乗り。変わらず笑顔。こんなにお客が手を振っている宙乗りは初めてかも。幸せな空気でした。有難うございました。

まだまだ書けそうなので続きは明日。

幕間にスーパーリストバンドを準備です。

aya

新版オグリ上演時に販売し、演出として使用した
スーパーリストバンド


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