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弥次喜多流離譚 千穐楽 後編

9月がスタートしました。弥次喜多千穐楽の感想の続きで私の8月を結びます。短かったような長かったような一か月でした。


幕間、二階ロビーの大混雑ったらありませんでした。昔に戻ったよう。違うのは静かなこと。一緒に観劇した歌舞伎を時々観る友人は、すごいすごいと言いっぱなし。弥次喜多を初めて生で観るとこうなっちゃいます。

江の島の場面。ここは染五郎くん團子くんの怒涛の早替り。これがびっくり!さらに速いでないではないですか!しかも息一つ乱れずスマート。私は猿之助さんのもう少し遊び心溢れるエンターティナーな早替りが好きですけど(笑)初めてのチャレンジでこの完成度。お二人の未来が楽しみになりました。もちろん、裏でサポートする皆さんもすごいのは前提です。そこに全力で応えているのが気持ちいいです。

それぞれが立役と女形で登場し二組のカップルが誕生します。ここが甘い雰囲気が出ているように感じて嬉しかった。笑三郎さん隼人さん、猿弥さん笑也さんのカップルは熟年でしたから。。新鮮。。というか、そうだ元はこうだったね、みたいな(笑)

そこからは歌舞伎座が大変!ということで江戸へ急ぎます。花道七三で、梵太郎の染五郎くんがお夏の團子くんの手をひいて「いざ!歌舞伎座へ!」のセリフがかっこいい!叫ぶ感じでキマリ、これは劇団☆新感線か?と思うくらいでした。

青虎さんの読売屋文春が大好きです。前半の密偵みたいな髪結さんも素敵だけど、1作目のキャラクターの登場は初日にキュンときました。言葉もどんどん変えていき、お客に語りかけて全体を一体にしちゃう。2日間代役をした弥次さんも観たかったです。

歌舞伎座没落の場面は、あの風景を見ると悲しいけど、この演出は猿之助さんらしいと思うのです。事実から目を背けず、現状をわかってもらう。そして、必ずそこには希望を持ってくる。必ず救いがある。だから猿之助さんの作る作品が好きです。

高麗蔵さんの副支配人はいつも変わらずそこにいてくれました。隼人さんはますます存在感、華がある方になってびっくり。代役のこともあり、拍手がひときわ大きかったです。笑三郎さんの佇まいが本当に素敵。グリーンが眩しい(笑)登場は新版オグリの音楽でしたよね。

歌舞伎座提灯のシャンデリア披露の時、オペラ座の怪人の曲が流れます。ざわつくのですが(笑)私はこの時のライティングが好きでした。あの歌舞伎座の天井の縦ラインが一枚づつ左から右、右から左に光るのです!しかもスピーディ!こんな歌舞伎座はじめてかも(笑)ここだけでなく、照明は猿之助さんも拘るところなので面白かったです。

やっぱり納める笑也天照大神。美しいし穏やかだし、目出度い感満載。からの’歓喜の舞’は最高でした。

曲がかかると、あちこちでスーパーリストバンドの灯りがつきました。二階席でつけている人は所々でしたが、一階席前方、二階の桟敷席はつけてる率が高かった。懐かしかったのは、一階席で両腕にしている人が多数(笑)オグリの時も両腕の人が多かったなーと思い出しました。カラーは白で、光り方が上品なのです!

2019年新橋演舞場「新版オグリ」

そうしたら手踊りもすごい!私の視界は踊ってる人ばかり!友人に「真似して踊って~」って言ったら「え~!」と言いながら踊ってた(笑)後ろのおじ様も「すごいねすごいね」と声出してました。

この場面、私が観る限り、猿之助さんはお客を見渡しているようにみえます。踊りの前は「さあ、いくよ」みたいな感じにも思えるし。隼人オグリ、新悟照手の立ち位置もあの時と同じ。その間に初代照手姫の笑也さん。幸四郎さんも完璧に踊ってる。多くの役者さんが客席を上下左右、気持ちが溢れそうな表情で見てくれていました。

そして、4人+2匹で宙乗り。染五郎くんの大事な「ボン吉」「ぼん」も一緒でした。一生懸命、ぬいぐるみの手を振らせていたのが可愛いかったです。何だか4人ともホッとした嬉しそうな表情でした。もちろんお客は興奮状態。声にならない声が溢れていました。

鳥屋に入ってから幕が引かれます。舞台上の役者さん方にも大きな拍手が起こりました。そこからです。じわじわ拍手が大きくなっていきました。もちろん感謝を届けたいという思いなのですが、私は、楽しかったね、幸せだったね、とお客で分かち合っている拍手にも思えて泣きました。友人も「拍手に泣ける」と泣いてた(笑)一緒に泣いた。

すると花道から幸四郎さん猿之助さん染五郎くん團子くんが登場。オールスタンディングになり拍手が続きました。で、猿之助さんがジェスチャーで静めます(笑)印象的だったのは幸四郎さんが「3年ぶり、いやそれ以上ぶりにこんなに満席の光景を見た」という話でした。それはお客の私もだからです。こんな光景を見ること叶うなんて感謝です。

カテコ中は、誰一人として大きな声は出さず万来の拍手。襲名公演やスーパー歌舞伎Ⅱの千穐楽、入院していた猿之助さんが病院からカーテンコールにやってきたこと、自分が座頭の公演で登場してくれた日々のことを想う。歌舞伎座では今までなかったけど、先日と今日、こうして登場してくれた。

猿之助さんは疫病禍になり、また進化し続けています。ワンピース歌舞伎で怪我をして以来、この疫病禍で猿之助さんはまた変わったと感じています。ご挨拶からは「お客も一緒に」という気持ちが伝わってきます。私たちも仲間なんだなぁと今まで以上に強い感覚で伝わるのです。

また、この日の景色は、猿之助さん一人では叶わなかったのでは?と思います。幸四郎さんが一緒だからこそ叶った景色かと。5か月間の休演明け、歌舞伎座を支えてきたと言っても過言ではない二人です。

そして、猿之助さんは裏方さんたちのことを必ず口に出して労います。それは今に始まったことではないけれど、それは裏方さんからの信頼に繋がっているのだと最近は強く思います。たった一日の演出変更で上演できるのは、猿之助さんと裏方さんの信頼関係があるからこそ。だから私もついて行きたくなるのです。

一瞬一瞬が愛おしく、幸せな余韻でした。

幸四郎弥次さん猿之助喜多さん、帰ってきてくれて有難うございました。またいつかお会いいたしましょう。


追伸:2年前の鬱々としていた自粛中、流行ったハッシュタグでつぶやいたtweet。友人が発掘。私は忘れていたけど(笑)夢が叶っていて、人生捨てたものではないと思いました。感謝。

aya

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