第三回ひとつなぎの会 春秋座
京都旅の続きです。
舞踊公演の後は「第三回ひとつなぎの会」です。
ワンピース歌舞伎の若手有志たちで結成された会。普段は師匠たちを支える側の皆様が主役になる舞踊の勉強会です。私は今までタイミングが合わず、第三回にして初めて観ることができました。
ワンピースにちなんで「ひとつなぎ」と名付けられ、スーパー歌舞伎Ⅱを象徴するかのように、メンバーが歌舞伎役者さんに留まりません。今回は、下村青さん市瀬秀和さん石橋正高さん、そして紅一点の花ノ本以津輝さんが加わっていました。
猿之助さんが「来るものは拒まず、去る者は追わず」と言っていたのが印象的でした。だから、勉強したい、お客の前で踊りたい、そんな気持ちに溢れた会でした。
まもなく始まるかなぁという頃、突然、下手から浴衣姿の猿之助さんが登場!お客のテンションが一気に上がりました。ワンピース歌舞伎がきっかけで始まったこと、腕の怪我をしている時に題字を頼まれたこと、普段、僕たちはこの人たちに支えられているということ、是非、名前と顔を一致させて、などなど。
「まさかパンフレットを買っていない人はいないと思いますが。。」ここでお客の心を鷲掴みにするわけですね。そうですよ、猿之助さんと言えば物販の鬼ですから(笑)ご自分の公演や、右近くんの自主公演時のなんとしても売りたいというあの姿勢。。こういう発言も当時を思います。自主公演のような小さな会はグッズやパンフの売上がすごく大事だと猿之助さんから学びました。
会場の雰囲気が温まったところで開演です。11組が素踊りで舞踊を披露。休憩が2回入って4時間です。これは観るほうも大変かな、と覚悟していました。けど、猿之助さんを含め、全員が熱演で感動が止まりませんでした。
特別出演の猿之助さん青虎さん以外の皆様は、パンフレットに指導者のお名前の記載があります。私は舞踊を全く知りませんので、歌舞伎の方しかわからないのですが、どこかお師匠さんを思わせる雰囲気も楽しめました。お稽古を頑張ったのだなぁと伝わります。
特に印象に残ったのが(演目が好みだったというのもあります)、笑猿さんの「静と知盛」。私ですら知っている曲です。静と知盛を前半後半で踊りわけます。静は笑猿さんのイメージでした。が、知盛がすごかった!あんなに激しい笑猿さんは観たことない。知盛の亡霊が長刀を振りながらの激しい引っ込みは、こちらも手に汗握りました。お隣の男性が大拍手で興奮して「熱演やん!」と声に出ちゃってたし(笑)引っ込んでからも客席がざわついてました。ちなみにご指導は菊之丞さん。
また、連獅子(これも熱い演目で好きだからです)は、ラストにふさわしい盛り上がりでした。段一郎さんが親獅子、右田六さんが仔獅子。澤瀉屋の型で踊りました。ご指導が猿之助さん右團次さん笑三郎さんというのがすごい(笑)
澤瀉屋の連獅子は振りが激しいのですが、仔獅子の右田六さんが熱かった。普段から立廻りを観ても身体能力の高さを感じる方です。ここで遺憾なく発揮してました。跳躍の高いこと!ダイナミックで攻めていてかっこいい。段一郎さんは、どっしりそれを受け止めていました。
二人が攻める姿勢を崩さず必死に踊るのを見て泣けました。素踊りなので毛振りではなく、手獅子の布の部分を回す振りがあって、なるほどと感動でした。スカッとしましたー!!
さて、猿之助さんの素踊りの「独楽」
ついさっき舞踊公演で團子くんの「独楽」を観たばかり。同じ演目を持ってくるところが猿之助さんらしいと思う。お客も楽しいし、きっと出演者の皆さん、團子くんも勉強になりますよね。團子くんにお稽古をつけることは、ご自身のお稽古にもなると思いますし。
登場から空気を変えてしまう。風が吹くのです。そして「わ!独楽売りがきた!」と一気に浅草雷門になる。劇場の空間が広がり、浅草の町が見える。賑わいが聞こえます。舞踊だけどお芝居でもありました。いつも感じるのですが、振りが「踊ってます」というのではなく、人物の自然な動きに思えるのです。リズムも呼吸をするような。いつでも一人だけ異次元な踊り。
理屈抜きで楽しく、観ているとこちらも笑顔になっちゃう。音楽も纏うように聞こえる不思議。その中にいつの間にか巻き込まれている感覚になります。物売り風情も可笑し味たっぷりで、お客の笑い声が絶えませんでした。
独楽の曲芸の場面が本当に面白いのですよ。やはり猿之助さんは喜劇の才能があるなぁと感動します。ちょっとした’間’なのだと思います。楽しすぎて、もうこれは参りましたという感じでした。
そうそう、突然、嘉島典俊さんが後見で出てきて笑いました。この方は本当に何でもできるのですね。と思ったら、踊った下村青さんも後見をしてた。この会ならではで面白かったです。
カーテンコールがあり、そこにも嘉島さんがいるのがツボだったのですけど(踊ってないから 笑)青虎さんが登場してご挨拶。お馴染みの宣伝も挟み、愛に溢れた幕切れでした。
ロビーでは猿紫さんと、SADAさん(猿之助と愉快な仲間たちのメンバー)がパンフレットを一生懸命「お土産にどうぞ!」と販売していました。もう一冊購入して、それぞれに入っていたサインは段一郎さん石橋正高さんでした。
外へ出ると月が。あたたかい余韻に、京都まで来てよかったと心から思う。猿之助さんはご自身のやり方で分け隔てなく後進たちに道を作っているのだと感じました。猿之助さんの仲間への愛、歌舞伎への愛が伝わりました。微力でも力になれるよう応援したいと改めて思いました。
猿之助さん方は大阪松竹座へ。
私の旅も続きます。
aya