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風をあつめて

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エッセイ
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#毎日更新

気を引き締めた貝

本当は先週終わらせておきたかったですよね、と私は言った。 それでカチッと音がした。 地雷…

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アンガー・マネジメント

久しぶりに会った友人が二人、我が家に遊びに来て、ダラダラと昼から酒をのんでいた。テレビで…

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最大の弱点

人には弱点がある。 柔道のオリンピックメダリストの谷亮子さんは相手を一目見ただけで相手の…

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口上手の仕事下手な虎

友達にビースターズという漫画を借りて読んでいる。友達ができるのも久しぶりなので緊張してい…

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早く夏が終わればいい

毎朝の通勤で自転車を漕ぎながら道ゆく建物を眺めるのが好きで、ある空き地に新しい一軒家が建…

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そのときだけのもの

いつも明るく笑う女性に、太陽みたいな匂いがするから好き、と言われた。私からみたら彼女こそ…

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習慣の教師なり

暇ができたらあれをやろう、これもやろうとひそかに浮かんでいた思いつきなんて、時間を持て余してみると魅力も何もなくなってしまう。 あのときこうしておけば、あれをやっておけばと言いながら、今やればいいことに考えは至らず、つい眠気に負けて目が覚めたら18時を過ぎる昼寝を謳歌する生活に誰が文句を言えようか。否、言えない言わせない。 ただ過ぎていく時間に焦りを感じながら、じわじわ迫ってくる罪悪感を華麗にかわしていく。 動いてないから減らないお腹に三食ばっちり詰め込んで「お腹空いて

走ることの本質

ランニングしてますか?私はしてます。この時期の朝夕は気持ちの良い時間が続きますね。 最近…

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ステイホーム・ライオン

ゴリラに両手で絞り上げられたみたいに胸をしめつけられている。 妻が娘に勉強を教えるのを横…

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鯉のぼり

風のない日だった。 娘とサイクリングの帰り道。 太陽が西の空を淡い色調に燃やしながら山際…

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精神と時の部屋

閉塞感が足の裏から膝の後ろを伝って腰をひとまわりする。倦怠感を伴う痛みが尻の上あたりを痺…

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春の電車

電車に乗ろう よく晴れた日に空をまたぐ 鳥のように幸せを運ぶ 電車に乗ろう 春になったら…

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ヒラメ・ナイト

開けないと 目を開けないと あの娘を見逃すぞ 楽しみにしていた ヒラメ・ナイト この日の…

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春夏秋冬、春

春 娘が一生懸命ノートに何ごとか書き込んでいる。入学前にひらがなを覚えようとしているらしい。針金に吊るされたような文字がノートにひっかき傷を残しているのをみた私は「一文字ずつ同じ大きさで書くと、きれいにみえるよ」と言った。娘は怒ったようにふーんと鼻息を荒く押し出して針金の続きに取り掛かった。 夏 晴れた日にノースリーブの袖口から細く伸びた腕をテーブルについて書き物する娘の物干し竿に吊るされた洗濯物みたいに整った文字をみて驚いた。上手になってる。「まっすぐの線を最初にひい