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風をあつめて

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エッセイ
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#自由詩

目と耳の間、人間の行為について

タレスという人をご存知ですか? 記録にある限りでは、世界最古の哲学者、つまり人類で最初の…

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気を引き締めた貝

本当は先週終わらせておきたかったですよね、と私は言った。 それでカチッと音がした。 地雷…

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アンガー・マネジメント

久しぶりに会った友人が二人、我が家に遊びに来て、ダラダラと昼から酒をのんでいた。テレビで…

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最大の弱点

人には弱点がある。 柔道のオリンピックメダリストの谷亮子さんは相手を一目見ただけで相手の…

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口上手の仕事下手な虎

友達にビースターズという漫画を借りて読んでいる。友達ができるのも久しぶりなので緊張してい…

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早く夏が終わればいい

毎朝の通勤で自転車を漕ぎながら道ゆく建物を眺めるのが好きで、ある空き地に新しい一軒家が建…

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そのときだけのもの

いつも明るく笑う女性に、太陽みたいな匂いがするから好き、と言われた。私からみたら彼女こそ太陽のようだった。 それでしばらく付き合い、深く傷つけて別れた。 そして数年後に再会した。 私は気後れして、ちゃんと目をみて話せなかった。 彼女を傷つけた記憶が海中の牡蠣のように脳裏の岩肌にこびりついていた。 しばらく無言でうつむいたまま、沈黙で延びきった時間に放置されていたが、彼女から口を開いた。 まだあなたは太陽の匂いがするのか知りたいと。 * ミルクが肌に染み込んだよ

むるめ辞典

■望郷 [読]ぼうきょう 望む郷 [例文] 祖父の船で無人島へ行った。 浜では子供たちが焼…

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あとでいいや

外は雨がシトシト降ってアスファルトを黒く濡らしている。雨用の靴を買おうといつも思っている…

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習慣の教師なり

暇ができたらあれをやろう、これもやろうとひそかに浮かんでいた思いつきなんて、時間を持て余…

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走ることの本質

ランニングしてますか?私はしてます。この時期の朝夕は気持ちの良い時間が続きますね。 最近…

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ステイホーム・ライオン

ゴリラに両手で絞り上げられたみたいに胸をしめつけられている。 妻が娘に勉強を教えるのを横…

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鯉のぼり

風のない日だった。 娘とサイクリングの帰り道。 太陽が西の空を淡い色調に燃やしながら山際…

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スマートにフェンスを越す

太陽は限りなく金に近い橙の柔らかい色に空を染めながら川の上流に向かって沈みつつあった。 いつものジョギングコースではその夕日に向かって走っていくのだけど、今日は新しいコースを見つけようと思い立って普段とは違う道を走った。 植物園の近くでは湿った土の匂いが夜の冷気にのって広がっていた。 見通す限りフェンスに囲まれた園の中はジョギング・コースにこそふさわしい穏やかな起伏と美しい花道が続いている。 閉園時間に人影はなくて、どれほどフェンスを飛び越えて中に入ろうかと思ったけど