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不思議なあとの身体と芸術


牧野貴さんという方の4K最新作【Memento Stella】をみた。

もともと見る予定はなく恵比寿映像祭にて、展示されている三宅唱監督とYCAMのワールドツアーというインスタレーション展示品にまつわるトークショーを聞いて帰るつもりだった。けれども三宅さんが最後に「牧野さんの最新作この後ね」などとぽつらと呟いたのがきっかけで気になりだし、次のラインナップを確認した。

わたしは4Kという響きにピンときたが牧野貴さんは知らなかった。東京写真美術館の1階に降りる。上映前のロビーはもう賑わっていた。牧野貴さんどんな人なのだろう、どんな作品を作る人なんだろう。ググった。

日本大学芸術学部映画学科撮影・録音コース卒・・・
おなじ大学の学科を卒業しておる・・・
その後渡英!しておる・・・その後の日本や国内外での創作活動。
(わたしが知らないだけで有名な方)
創造力・記憶など人間の身体内部にある映像と融合する映画を研究し・・・?映像表現活動において文章でもはや想像ができなかった。
こうしてここにいるのも縁だなぁ。観てみよう。

わたしはチケットを買った。

60分の上映の後、御本人のトークショーがあると案内があった。初めての映像体験。最初の体感は苦手、だった。こういう映像と音の芸術をどう体感したらいいのかわからない。と思った。けれども次第にハマっていった。美しいのか醜いのか、醜いから美しいのか、悲しいのかいろんなものが蠢いた。吸い込まれていく。これは宇宙?心の奥?宇宙だったらいいな。深く濃い黒と、黒と見分けがつかない緑が混ざった沼のような光景が広がったとき、今すぐ飛び込みたいと、わたしを取り巻いて欲しいと思う世界だった。いやそれはわたしの奥だったのかもしれない。わたしの目にうつる映像と音を感じながら、次第に見えるはずのない光景や文字が浮かんできた。それは前に数回したことのある瞑想に近い感覚だった。そして悲しくなり、わたしは最後まで見ることなく眠っていた。ふと起きるとエンドクレジットで牧野貴さんの名前が映っていた。

こんな映像芸術を作る方がどんな人なのか、どんな言葉を発する人なのかすごく気になった。それと同時に、ぼーっとして何にも取り入れたくない気持ちにもなった。
わたしは牧野貴さんという方の姿を見る前に劇場を出た。

こんな不思議なこともあるんだと思いながら、ようやく元の気に戻ったような今。
やっぱり牧野貴さんのトークを聞いたらよかったなと思ったりもする。だけど、今日はやっぱりどんな方か知らないままでもよかったような気もしている。
一体どうしたら、そういった芸術に辿り着くのだろう。そして、今日この作品を観ていた方たちはどんなことを体感したのだろう。

人間って、人のゆく道って面白い。

-今日の写真-
昨年フェルメール展に行ったときの。2月3日までだったということで先日終わったんだなぁ。牛乳を注ぐ女を見た時感動したんだよな。この風景の中にわたしの母がいる。

2019.02.17
村田唯

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