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ステキな優勝スピーチ
仙台育英高校の監督さん(須江航さん)の優勝スピーチが最高だった。
(インタビュアー)今年の3年生は、高校に入学したときから新型コロナウイルスの感染に翻弄されてきました。
「入学どころか、たぶんおそらく中学の卒業式もちゃんとできなくて、高校生活っていうのはなんていうか、ぼくたち大人が過ごしてきた高校生活とはまったく違うんですね。青春ってすごく密なので。
でも、そういうことはぜんぶダメだ、ダメだ、といわれて、活動をしててもどこかでストップがかかって、どこかでいつも止まってしまうような苦しい中で、でも本当に諦めないでやってくれたこと。
でも、それをさせてくれたのはぼくたちだけじゃねくて、やっぱり全国の高校生のみなさんが、本当によくやってくれて、たとえば、今日の下関国際さんもそうだけど、大阪桐蔭さんとか、そういう目標になるチームがあったから、どんなときでも諦めないで、暗い中でも走っていけたので、本当にすべての高校生の努力のたまものが、ただただ最後、ぼくたちがここに立ったということだけなので、ぜひ全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」
監督は、インタビュアーの「初優勝おめでとうございます」に対して、
「宮城のみなさん、東北のみなさん、おめでとうございます!」
と返している。
視線がインタビュアーではなく、東北全土に飛んで広がっている。
そして、コロナのこと。
いまの大学3年生も同じ。高校の卒業式も、大学の入学式もなかった。
思い出を振り返る機会も、新しい門出を祝う機会も奪われた。
授業はオンラインなので、キャンパスに来ることもなく、
春学期が終わり、夏休みが終わり、秋学期が過ぎて、2年生になった。
いま3年生になった彼ら彼女らは、就職活動の準備の真っ盛りだ。
本来ならたくましい知性を鍛え、しなやかな感性を育むべきときに、
おそるおそる活動を始めては、感染が広がって止められ、
それが若者のせいにされ、悪者にされたりもした。
大人たちのそれとはまったく違う大学生活だった。
監督は自分たちのことを語ったあと、
こんどは全国に、そして戦ってきた相手をリスペクトするように視線を合わせる。
さらに、
「どんなときにも諦めないで、暗い中でも走っていけた」
コロナと、日暮れが早い冬の東北とのメタファーをひとつかませて、
「全国の高校生に拍手してもらえたらなと思います」
主役は自分たちのチームではなく、全国の高校生たちだ、と。
2018年、須江監督率いる仙台育英高校は甲子園で0-9、大敗した。
「1000日後に全国制覇するチームをつくる」
と目標を立てて、周りからの冷笑を気にせずひとつひとつ積み上げてきた。
1471日後、目標は達成できた。
しかし、自らの勝ちを誇らず、他者に拍手を送った。