【連載小説】聖ポトロの巡礼(第16回)

おしまいの月40日

 石や乾燥した大地や、枯れた植物が点在する埃っぽい道が続く。

 最近は水分の確保が非常に重要だ。この土地に入ってから、今までみたいに川や池の水をどうにか飲むような水分供給方法がままならない。何せ、水源がないんだから。

 幸いなことに、この道を行く旅人相手なのか、道沿いの所々に集落があって、そこでどうにか井戸水を分けてもらえる。ただ、2ガイン前に最後の集落を経った後、新しい集落を発見できないでいる。
 水はまだ、節約すればあと3ガインくらいは持ちそうだけど、ちょっと不安だ。
 一つ幸いなのは、こういう乾燥した土地でも、季節柄なのかそんなに焼かれるような暑さとかじゃないってこと。

 そういえば、あと10日ほどで新年になる。通る集落の人々ともそういう話をした。
 で、新年1日目はサバラバ唯一の祝日「聖ポトロの日」なんだそうだ。でも、通り過ぎる集落の人は、だからといってその準備に追われるような様子でもなく、いつもどおりな感じだった。
 もしかしたら、ゼビルの街辺りじゃ、街を上げた一大カーニバル&フェスティバルなのかも知れないけど、この辺の人(ゼビルからそう遠くもないと思うんだけど)はそんなにお祭りって感じでもない。飾りつけとかも特にしないみたい。唯一の祝日がそんなんでいいの? とか思っちゃうけど、ま、そんなもんか。俺たちの世界の人間が異様にお祭り好きなだけなのかもね。

 埃っぽいので野宿の場所にも結構困る。遮蔽物が少ない分朝日がキツイので、できるだけ大きな石の影に入って眠るようにしてるけど、そういう石を探し出すのも一苦労で、結局夜遅くになるまで歩き続けるような日が多い。
 今日はすんなり寝床が見つかるといいけど…。



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)