【連載小説】聖ポトロの彷徨(第15回)
36日目
階段を降り始めてから、まるまる二日ほど経過している。そして私はまだ階段を下り続けている。
距離にしてどのくらい降りたのかは、もう分からない。とにかくどんどん下へ向かって階段を降り続けている。途中に踊り場や休憩所などはない。ましてや、何かの部屋の入り口や外への出口などもない。ただ延々と階段が続いているのだ。しかも、全く明かりのない階段が。
入り口はすでにはるか上のほうになってしまい、ここまではもう光が届かない。電池節約のために、コムログのバックライトを消してしまったので、この手元のケミカルライトだけが唯一の光源だ。このぼんやりとした薄緑の頼りない明かりでも、慣れてくると暗闇よりはずっといい気がしてくる。このライト、考えてみるともう三本目だ。
階段はただまっすぐ下っており、折れたり曲がったりといった変化は全くない。
一体どこまで続くのだろうか。
体力にはそれなりに自信のある私だが、これほど下り階段ばかりが続いたせいか、さすがに両のひざが仲良く、ずしり、ずしりと痛くなって来始めた。
もちろん、適当なタイミングで休憩を入れるようにはしてはいる。だが、幅1メートル程度の階段が延々続くだけのこの場所で、横になってゆっくりと体を休める術などありはしない。
コムログの電池を節約したいので、記録は短めにとどめておく。いや、もっぱら他に記録すべきことなどないと言う方が正しいのかもしれないが。
しかし、そろそろ部屋だの踊り場だのにたどり着いて欲しいと心底思う。できれば、コムログを充電できる明かりのある・・・。
あと、体を休められる場所にたどり着くまで、最後になってしまった圧縮水分はお預けにしようかと思う。
【記録終了】
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)