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【9日目】なぜ『地獄』に「生まれてくる」のか(ジンセイのトリセツ)

◆ちょっと【地獄】に用がありまして

 前回の続きですが、要するに天国といういわゆる「死後の世界」というのが『帰る場所』だと考えると、この地獄に『用があってわざわざ生まれてきている』という推測と矛盾しません。

 じゃ、わざわざ地獄にやってくるこの

「用」

とは何でしょうね? そこを考えていきましょう。僕らはなぜこんな「苦しみしかない地獄」に生まれてきているのでしょうか。このことがはっきりすると【天国】というのがどういう世界なのかもわかってくるはずです。

 ちょっと復習ですが、この世は「一切皆苦」なんでしたね(【5日目】)。
 【大いなる矛盾】=「自分が一番されたくない『殺される』という行為を他の生き物に毎日やらないと自分が死んでしまう」というエゲつない大前提が支配する世界、それこそが僕たちが今いる『地獄』なんでした。

 では改めて、【8日目】に書いた、僕たちが地獄に降りてくる

「用」

とはどんな用なのか? ここで考えなければならないのはやっぱり

「地獄にわざわざ降りてきている」

という、すでに起こっている事実です。

 用をするために来ている、ということは、この場所が「地獄である」ことと必然的につながるはずです。つまり

地獄でなければできないことがあるから、わざわざ来ている」

ことになります。イオンモールの話を思い出してください。イオンモールでなければ(家にいては)できないことがあるから(買い物やメダルゲームや食事など)わざわざ車などで向かうんです。

 さらに……「じゃんけんの話」(【7日目】)も思い出してください。地獄という場所で「なぜ僕らが生まれてきたのか、将来どうなるのか」を「誰も知らない」という仕組みになっているのは

「じゃんけんができるようにするため」

でしたね。

 つまりこの「『用』とは何か」は、じゃんけんという例えを使うと

「じゃんけんがしたくて、地獄に降りてきている」

という結論になります。


◆地獄に降りる『用』とは何か

は???

と思ったでしょうね……でもほら、じゃんけんはあくまで例えです。上級編で一番最初に書いた【個別のドラマ】という概念も、思い出してください。

 要するに僕たちはそれぞれが

やるべき【個別のドラマ】をやるために生まれてきている

ということが考えられます。
(この結論は、次回以降の「時間というものの話」でも重要な話になりますので、よく覚えておいてくださいね)

 さて、これを逆に考えると、天国という「元いた世界」では

【個別のドラマ】ができない

とも考えられます。なぜって、こんな『苦しい世界』にわざわざ「【個別のドラマ】をやりに来きている」のだから、それはこの『苦しい世界』でしかやれないからだ、と考えるほうが自然だからです。

 つまりです、じゃんけんの例えに戻すと

【天国】ではじゃんけんができない

んです。じゃんけんをするためにこんな恐ろしくて苦しい地獄に来ているのだから、元の世界ではそれが「どうしてもできない」のだと考えられます。

 どういうことか……ほら、【7日目】でじゃんけんの話を出したときの「じゃんけんができない世界」を思い出してください(今回復習が多くてすみません)。

・自分がどうして生まれたのか
・自分がいつ死ぬのか
・自分と関わる人間や他の生き物がどんなか
・それらといつ出会うのか
・そのときどんな喜びや悲しみを体験するか
・そのときの「感覚」はどんなか

 そういう「全て」を、生まれたときからすでに「知っている」状態で人生を歩むとどうなるか……あのときは

「一度見た映画」

という例えを出しました。多分、あらゆる驚きと感動が半分以下になるはずです。

◆天国では『死ねない』し『傷つけない』

 結局、天国とはどういう世界なのか? というと

全ての【個別のドラマ】が「結末まで全部わかった状態」で起こる

世界だと考えられます。これが「じゃんけんができない世界」である【天国】の姿です。

 多分ですけどね……死んで戻ってからしばらくは「楽しい」と思うんです。苦しいことが一つも起こらず、何もかもが自分の思い通りになるんですから。他人との関わりでも、イヤなことを一切経験する必要がないですし、自分が思ったとおりに相手が動いてくれます。それも、瞬時に。

 これに似ているものが一つあります……それは

「無敵になる裏技」

です。

 大昔のファミコンゲームには「無敵になる裏技」がついてるものがあって、そのゲームでは裏コマンドを入力すると敵に当たっても死ななくなるんです。
 これ、最初はすごく楽しくて、どこまでも遊ぶんです。でもね……やっぱりだんだん飽きてくるんです。ゲームの本質である

「敵をかわす、敵を倒す」をやる必要がない

からなんです。本当に、コントローラーを持たずにボーッとしていてもどんどん進むんです。何もしなくてもいいし、むしろ「できない」んです。

 多分【天国】というところでは僕たちは「無敵」状態で、それでだんだん飽きてくるんだろうと僕は考えています。だからこそ、苦労しかない【地獄】に降りてくるんだ、とね。


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「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)