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【連載小説】聖ポトロの彷徨(第4回)

10日目

こちらの時間にも、だいぶ慣れてきた。惑星間の日差、つまり1日の長さが違うということが、これほどまでに体力と精神力を消耗させるものだとは、と正直驚いている。

私も仕事柄、海外へはよく行くほうだし、時差の違いによる感覚の変化にはずいぶん慣れたつもりでいたため、日差も時差と同じようなもので、さほど体には影響しないだろうと考えていたのだ。
だが、1日が1時間45分ほど長いというだけで、活動時間と睡眠時間のバランスが、地球にいた時とずいぶん変わってくるということに、改めて気付かされた。
普段より1時間多く眠るのも、普段より1時間多く活動するのも、どちらもわれわれ地球人には、大変な慣れを必要とするのではないだろうか。
もし多くの地球人がこちらの惑星に移民することになるとしたら、まずこの問題をクリアする必要があるだろう。これは将来、地球の自転するペースにあわせて暮らしている全ての地球人に、共通の問題となるはずだ。

今日も荒野の大地を進む。道は乾燥していて固く、割と歩きやすくて助かる。
いや、正確には道と呼べるような地形はなく、コムログの周辺音波探査結果にしたがって、なんとなく歩いているだけに過ぎないが。

こちらに着いてから、天気は快晴以外になったことがない。つまり、雨が全く降っていないのだ。いや、雲ひとつないと言える。この場所がこのような荒地になってしまった原因の一つは、おそらく、この天候のせいなのではないかと思う。
何せ、全ての植物は枯れ果て、生物は死に絶え、川や井戸が完全に干上がっているのだ。

だが、ここで一つ問題にすべきことがある。それは、この異常な天候が続く理由だ。
なぜ、あれだけ豊かだった土地を生み出した気候が、このような死を呼ぶ過酷な環境に、変貌を遂げてしまったのか。

もしかしたら、その理由こそ、この異変とも言うべき状況の、原因そのものなのかもしれないとすら思えるのだ。

とにかく、周辺の探索を続行しつつ、前任者の本にあった「城塞都市ゼビル」や「ロヌーヌ」のいる場所を探し当てなければならないだろう。そうすれば、まだこの星で誰かに会えるかも知れないし、いわんや人がいなかったとしても、何がしかの手がかりを得られるかもしれないだろう。

圧縮水分を数えてみた。あと26個あった。

【記録終了】

「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)