【連載小説】聖ポトロの巡礼(第5回)

貝の月36日

 ドドロの実のせいで戻された5日分を、どうやら4日で取り戻せた。こないだぶっ倒れた岩がこれだ。確かに見覚えある。
 で、今になってよくこの辺りを観察してみると、草原の丘に、こんな感じの黒っぽい岩がごつごつと、ところどころ生えている変な地形だ。
 岩が生える? いや、まさに生えている、って感じ。全体的には草原なんだけど、動物かなんかいるかのように、所々にこうやって岩が転がってるんだ。いや、下から生えてるってほうが、やっぱり近い。

 面白い地形に、そして草原と青空のコントラスト。心がほっこりする感じ。適当な岩の上に座って、かすかな風を感じながらしばらく足の疲れを癒そう。

 元気になってからこっち、とにかく遅れを取り戻そうとただ黙々と歩いてきたので、実のところ結構疲れてる。一応目標地点はここだったので、ひとまずゴールといったところだ。
 でも、こないだは5日かかった道を、今度は4日で歩いてるから、やっぱり少しずつ体力がついているのかもね。病み上がり、とまでは行かないけど、一度毒でやられた体だとは思えないくらい元気だ。

 元の世界よりも空気がきれいなのも関係あるのかな?

 ちょっと手前で、こないだ食べたドドロの実が成っている、ドドロの木を見つけた。背丈よりも低い小さな木に、こないだはまだ熟れてなかった実が、今や何個か熟れて食べごろ(?)になってた。
 悔しかったので、それらを全部もぎ取って、地面に落としてぐちゃぐちゃに踏んづけてやった。ちょっとは気が晴れるってもんだ。

 ま、しばらくこの岩の上で休憩したら、今日はもうちょっと歩いてみよう。



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)