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父が死ぬとき、◯◯だよ!とツッコミ入れてみた

約5ヶ月ぶりに会った父の姿に驚きが隠せませんでした。
兄によると2週間食事を取らずに水だけを飲み、つい1週間前まで35度のウイスキーを毎日500ml飲むことだけが唯一のカロリー摂取で、自力でトイレに行けず体重は30キロ代でした。
兄は何度も病院に連れて行こうとしましたが「絶対に嫌だ」と抵抗し続けたそうです。

話を聞いて、死ぬ準備をしていると思いました。

悲しい、という気持ち以上に、それが父にとってどれほど過酷であり、死がどれほど望ましいことなのかわかりたいと思いました。普通に考えて食事を2週間取らずに生きるというのがどれだけ苦痛なんでしょうか。病院に行こうと何度も言われ続けて、理由も言わずに殻に閉じこもるのはどんな気持ちなんでしょうか(言い続けている兄の気辛さは理解できますが)。

私は自殺に関する話をサーチしては、自殺は正しいか間違ってるか考えるのですけど、とても白黒はつかないです。
その代わり、自殺するのは生きるのと同じくらい辛い目に遭うのではと思います。飛び降りるにしろ服毒を図るにしろ、最後の一歩を踏み出すのはとてつもない気力が必要です。勢いでやったならば、今際の際に「やっぱなし!」と思うのではないでしょうか。

父との対面の第一声で、こう言いました。

「兄ちゃんから今までの経緯を聞いて、父さんがどんな気持ちか俺なりに察した。
今まで顔を会わせる度にケンカしちゃうから、お互いにできるだけ距離を空けてきたよね。
でも今度ばかりは父さんのしてほしいことを全て聞いてあげる。
だから俺から1つだけお願い。
俺たちと一緒に病院へ行こう」

こう言ったら父は頷いてくれました。おんぶしたら「やっぱ嫌だ」と暴れましたが強制連行しました。
病院への搬送後、医師からは、衰弱や臓器の低下が見込まれていて回復は難しいが大きな疾患はないだろう、という診断をいただきました。
タフだな…を通り越して、驚異的な運命を持ったオヤジだな…と感激するより呆れてしまいました。
呆れるエピソードといえば、我々家族の、もう1人のアニキ的存在でもある遠藤さんが病院に駆けつけたときの父の第一声が、

「死ぬかと思った…」

「そりゃそーだよ!!!」と、生涯でこれ以上ない純度100%のひねりなしツッコミをしました。

私は日帰りで東京へ帰り、兄は父に付き添うためそのまま病院へ残りました。
いつから私は「東京へ”帰る”」と言うようになったのか。私の家は東京になったのか。
寂しいけど、そういうもんだと思います。

#エッセイ #家族 #父 #死 #遺言 #親 #子供 #死生観 #人生 #生涯

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