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猛暑日のドライブ

自分には、決定的に足りないものが2つある。「方向感覚」と「遊び心」だ。突然の自分語りで申し訳ない。

前者はなかなかの重症だと思う。ついさっき通った道なのに、元来た方向が分からない。地図アプリなしではどこへも行けないし、使っていたとしても、なぜか迷ってしまう。自分でも謎だ。

後者に関しては、麦わら屋の利用者さんたちと接しているときに痛感する。「こうあるべき」という価値観が強すぎて、反省することもしばしば。とあるカウンセラー的な人には「君には本当にあそびがないね!」とバッサリ言われたこともあった。つらい。

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最近、小野塚さん(過去記事はこちら)と2人でドライブする機会があった。彼は車で移動するのが大好きで、どんどん過ぎていく窓の外の景色を眺めながら、よく笑っている。

ドライブに先立ち、先輩職員が車を走らせ、小野塚さんのお気に入りの公園をいくつか教えてくれた。私は「○○交差点で右折」とブツブツ言いながら、必死でメモを取った。その後も地図アプリでシミューレションを重ね、なんとか自分の運転で2か所の公園へ行けるようになった。

小野塚さん

さあ、ドライブ当日。梅雨真っ只中だというのに、この日は雲ひとつなく、うだるような暑さだった。

小野塚さんはニコニコしながら助手席に乗り込み(嬉しい!)、無事に1件目の公園へ到着すると、水道で顔や服を濡らして涼を取った。しばらくするとまた車に乗り込んだので、こちらは「よーし、次へ行くぞ」と気合いを入れ、再びハンドルを握った。

の、だけど。小野塚さんは2件目の公園に近づくと、スッと反対方向を指さした。「こっちへ進みたい」という意思表示だ。「予習したルートから外れるな…」と思いながらも、言われた通りに進んでみる。少し走ると、小野塚さんはまた違う方向を指さした。「うーん…まあいいか」と曲がってみる。これが3~4回続いた。

気づいたら、ぜんぜん知らない道にいた。「小野塚さん、ここどこ~」と言いながら窓の外を見てみると、道端に少し早めのひまわりがたくさん咲いていた。ちょっとへんてこな看板を掲げた、小さなお店も視界に入ってきた。へえ、こんなところあるんだ。助手席に目を移すと、小野塚さんは声を出して笑っていて、こちらも思わず笑ってしまう。

普段は目的地にたどり着くのに必死だけど、小野塚さんとのドライブでは、予想外の寄り道を楽しめた。方向音痴は、一生直らないと思う。でも遊び心のなさは、小野塚さんと過ごしていくうちに、少しずつマシになっていくかもしれない。

ちなみにその後、必死の思いで公園の駐車場にたどり着いたのだけど、小野塚さんはついに車から降りなかった。猛暑と日差しが嫌だったらしい。そりゃあそうか。また寄り道しながら、ぼちぼち来よう。

(文:広報スタッフ/ライター 原菜月)

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