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ずっと架空の少女に恋している

 恐らく私は、ずっと架空の少女に恋している。何も今にはじまったことではなく、その歴史をさかのぼるには思春期の到来から語る必要が生じるが今回はなるべく割愛しようと思う。理由は客観的に私がこの世に実在する女性が想定する色恋沙汰の相手に値しなかったからであり、私自身も自虐という形でそれを早くに自覚し、色恋沙汰とは無縁であることを自負していた。その証拠に恋愛の告白をされたことは相手の罰ゲーム以外になく、勝手に出されたラブレターで知らない相手に振られた経験も何度かある。思春期の到来と共に顔をのぞかせる色恋模様や衝動性について、こと現実の世界において私のやり場は無かったのである。

 そういった理由で現実逃避の一環として私の性倒錯が幕を開け、アニメ・漫画・ライトノベルといった架空の世界や空想の世界に強く惹かれるようになり、それ以外が目に入らなくなっていく。コンピューター用恋愛シミュレーションゲームが仕向ける選択肢でもって進む架空の学園生活に夢中になり、その当時インターネット上に溢れたシアン色の髪を揺らす架空の歌姫が歌う歌に熱狂し、のちに英雄や戦艦が転生したとされる美少女と画面越しに出会うために大枚をはたいた。そして今、私はVtuberと呼ばれる架空のキャラクター設定や世界観を背負う配信者の存在に心奪われようとしている。

 もしかすると、架空の少女に恋する以外、私にはもうないのかもしれない。少なくとも今なお私は、ずっと架空の少女に恋している。

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