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ゼルジーとリシアン

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2021年3月の記事一覧

19.ロンダー・パステルのゼルジー

 ロンダー・パステル行きの電車の中、ゼルジーは「木もれ日の王国物語」と書かれたノートに目を落としていた。別れ際、リシアンからもらったものだ。
 向かいに座っているパルナンは、声をかけようとして、そのほほにまだ涙の跡が残っていることに気付き思い直す。ゼルジーはノートを見ていたものの、読んではいなかった。つい、いましがた別れたリシアンのことを思い返しているのだ。
「ああ、ゼル。向こうに帰っても、わたし

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20.影の国へ行く方法

 パルナンが家に帰ってくると、ゼルジーは居間でノートを広げていた。
「ゼルジー、また『木もれ日の王国』を読んでいるの?」
「うん」ゼルジーは顔も上げずに答える。
「もう、100回は読み返してるんじゃないかな」パルナンが言うと、
「そうかもしれない。すっかり覚えてしまっていて、空でも言えるのよ」
「よく飽きないね」
「ここに書かれている1文字1文字が、わたしとリシーとの唯一の繋がりなんだもん。飽きる

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21.きずなの魔法

 夕食を急いで済ませると、ゼルジーはさっそくソームウッド・タウンに電話をかける。
「あ、もしもし。クレイアおばさん? わたしよ、ゼルジー。あのう、リシーとお話がしたいんですけど」
「あら、ゼルジー。ちょっと呼んでくるから待っていてね」受話器の向こうで、クレイアがリシアンを呼ぶ声が聞こえた。
 ほどなく、リシアンの声と代わる。
「もしもし、ゼル。どうしたの?」
「ああ、リシー。声が聞けてうれしいわ。

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最終回.リシアンからの手紙

 11月も中頃を過ぎると街路樹はすっかり葉を落とし、冷たい風が吹くようになっていた。
「もうすぐ冬休みだわ。毎年、寒い季節になるのが嫌でたまらなかったの。厚着をしなくてはならないし、だいいち、わたしは寒いのが大っ嫌いなんだもん」暖炉の前であぐらをかいて座るパルナンに向かって言う。
「そうだよなあ。ぼくも冬は苦手さ。雪が降るのは楽しいけど、遊んだあとは決まってあかぎれになっちゃうんだ。指の先まで痒く

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