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シュールな短編小説

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ファンタジー、そして時にはシュールな短編集。
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2021年5月の記事一覧

台風が来た

 天気予報によれば、昼過ぎ頃、勢力の強い台風が日本列島を直撃するという。まだ晴れているが…

むぅにぃ
2年前
4

落ちた隕石を見物に行く

 「ヤジウマ愛好会」のみんなで、先だって、町中に落ちた隕石跡へ出かける。 「だって、わた…

むぅにぃ
2年前
2

ターンパイクを走る

 桑田孝夫の運転で、箱根の連絡路を走ることになった。 「ねえ、桑田。あんまり飛ばさないで…

むぅにぃ
2年前
5

もう、ご飯は要らない

 そのキジトラとは、物心がついたころからずっと一緒だった。だからかもしれない。わたしには…

むぅにぃ
2年前
4

漢字の使用料を請求される

 長年にわたって中国の主張してきた「漢字著作権」が、国際裁判で認められた。日本は過去を遡…

むぅにぃ
2年前
2

湯たんぽを買う

 寒くなってきたので湯たんぽを押し入れから出す。ところが、虫に食われて穴だらけ。 「わあ…

むぅにぃ
3年前
3

DVDをレンタルする

 DVDを借りてきた。「今日借りてきた映画の名前を僕達はまだ知らない」という、やけに長いタイトルだった。 「なんだって、こんなもん借りてきちゃったかなぁ」借りておいて、いまさらだが後悔する。ショップで手に取った時は、けっこう面白そうだぞ、と思ったのだが。  ストーリーは、主人公の少年が、突如として街に現れたゾンビをバッタバッタと切り倒していく、というものだった。 「あれ、こんな話だったかな。店で読んだ時は、学園を舞台にした、酸っぱくも甘い、恋愛映画だったはずだけど」テレビの前

近所のノッポさん

 掃除機をかけていると、開けっ放しの窓の外を影が行きすぎる。通りに面した部屋だから人の行…

むぅにぃ
3年前
2

転校生がやって来た

 5年3組に今日、転校生がやって来るという。 「どんな子だろうね」隣の席の桑田孝夫に話し…

むぅにぃ
3年前
4

毛布の海で

 明け方、寝返りを打ったわたしは、パジャマ姿で毛布の海原に投げ出されてしまった。 「あっ…

むぅにぃ
3年前
2

翼のある仔ウマ

 もう間もなく冬がやって来るというのに、そこはまるで初夏の草原だった。  牧場には、翼を…

むぅにぃ
3年前
2

今日はカレーの日

 わたしの住む町では、毎週金曜日が「カレーの日」と決まっていた。夕方ともなると、どこのお…

むぅにぃ
3年前
10

芝刈り機、怒る!

「桑田、そろそろ床屋でも行ったら?」もともと鋼毛なところへ持ってきて、天然パーマである。…

むぅにぃ
3年前
1

ハカセの発明品

 4丁目の外れには、通称「ハカセ」と呼ばれるおじいさんが住んでいる。 一応、発明家ということになっているけれど、製品化されたとか、誰かが買ってくれた、なんて話をこれまでに1度だって聞いたことがない。  町内の口さがない人は、「頭のいかれたじじい」だの、「ネジの緩んだアインシュタイン」などと呼んでいた。  そんなハカセだったが、わたし達は子どもの頃から家に入り浸りだった。山と積まれたガラクタは、用途こそわからないものの、わくわくと想像力をかきたてる。 「どれも、わしの最高傑作な