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ラブタームーラの魔法昆虫

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#魔法

21.星降り湖で(最終回)

 タンポポ団一同は一旦家に戻り、夜が訪れるのを待った。
 ふだんは夜の外出など許されない小学2年の子ども達だったが、博物館の館長が一緒だと聞かされ、二つ返事で許可がもらえた。
 雲1つない、明るい満月の夜だった。そろって博物館へと赴き、光アゲハの入ったカゴを持つ館長と合流する。
 虫カゴは、まるでランタンのようにキラキラと明るく輝いていた。これなら、夜の森を十分に照らしてくれるだろう。もちろん、帰

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19.銀色のオカリナ

 3月ともなると、ラブタームーラに暖かい南風が吹くようになってきた。木の枝からは芽が吹き、クロッカスやチューリップが花を咲かせ始める。
 すっかり緑色になった三つ子山の1つ、三の山を、タンポポ団はテクテクと登っている最中だった。
「本当にあんのか、銀のオカリナなんて」先頭を歩く浩は、フウフウと息を切らせながら文句をぶつける。
「言い伝えによれば、この三の山のどこかにあるそうですよ」元之は、手帳に書

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17.雪の降った朝

 午後から降り始めた雪は夜になってもやむ気配がなく、ますます勢いを増していた。
 大人達は憂鬱そうに顔を曇らせ、子供達は大はしゃぎ。
「こりゃあ積もるぞっ」浩が歓声を上げる。
「明日は雪合戦ね」いつになく美奈子もそわそわ興奮していた。
「一応、手袋はしてくるように。しもやけはあとが大変ですからね」合理的な元之は注意を忘れない。
「この白い粉みたいなのが雪?」緑は空を見上げながら言った。長い睫毛に、

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16.冬のセミ

 ラブタームーラにも木枯らしが吹き始めるようになってきた。
 そんなある日、緑が耳に手を当てながら言う。
「お姉ちゃん、セミが鳴いているよ」
「まさか。だって、もう12月なのよ。とっくのとうに土の下で、今頃はぐっすり眠ってるわ」
 けれど、言われてみれば、かすかにミーンミーンと聞こえていた。
「あれってセミじゃないの?」緑は小首を傾げながら美奈子の顔を仰ぐ。
「そうねえ、セミの声よね。誰かがテレビ

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15.見えない赤ちゃん

 元之には妹がいた。生後8ヶ月で、江美利という名である。元之は江美利が可愛くてたまらず、よく抱っこしては「あぶぶぶぅ」とあやした。
 江美利のほうも元之が大好きで、抱かれるとうれしそうにキャッキャとうれしそうに笑う。
 元之は面倒もよく見た。母親の代わりにオムツを交換したり、ミルクを飲ませたりするのも億劫がらずにする。
 もし浩や美奈子がそんな様子を見たら、元之の意外な一面にびっくり仰天するに違い

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14.和久の憂うつ

 そもそも魔法昆虫を捕まえるために結成したタンポポ団だった。このところ、そのことも忘れかけ、半ば探検隊として活動することが多い。

「今日は『岩神様の洞窟に入ってみようか」浩が言い出した。
「えー、バチが当たるよう」そう弱音を吐くのは和久である。タンポポ団の中で一番の臆病者で、いつもしんがりを務めていた。
「ばかね、神様なんいるわけないじゃん」美奈子はばかにしたようにいい下す。
「そうですよ、和久

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11.タイフウ

 長かった夏休みも終わり、ようやく学校が始まった。
「9月に入ったからといって、まだまだ暑い日が続きます。できるだけ日陰を歩いて登下校するようにしましょう」担任の小倉静子先生がそう注意をする。
 外では風がビュンビュンとうなり、葉や枝、そして木そのものを揺らしていた。
「すごい風だな。そういえば、今日はタイフウがくるって言ってたぞ」後ろの席で、浩がそうささやく。
「タイフウってどんなの?」和久が聞

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10.ダイヤモンドカマキリ

 背の高い2本のニレの木が、ざわざわと葉を揺らしながらおしゃべりをしていた。
「今日も暑いのう。雨でも降ればいいんじゃが」
「雨なら、先月までたんと降ったろう。わしはもう十分じゃよ」
「まあ、公園番が毎日水を撒きに来てくれるんで、だいぶ楽だがなあ」
「それに、暑い暑いと言っておっても、じきに秋が来て、すぐ冬だ。わしらの葉がきれいさっぱり抜け落ちるのも、そう遠くはないて」
 ここは2丁目にある中央公

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6.町外れの魔女

 久しぶりに倉又館長に呼ばれ、美奈子、浩、元之、和久、そして緑の5人は、博物館を訪れた。
 一同は応接間に通され、ケーキと紅茶を出される。
「館長、魔法昆虫のことで何かわかったんですか?」開口一番、美奈子が尋ねた。
「いやあ、そのことだがね」館長は紅茶をすすった。「相変わらず、マユに書かれた文字のことはわかっておらん」
「じゃあ、なぜわたし達を呼んだんです?」元之は首を傾げる。
「うむ、実はな、有

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4.タンポポ団の誕生

 博物館にある「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた部屋の中に、美奈子、浩、元之、そして館長がいた。
「いいか、みんな。そこら のものをむやみに触れちゃいかんぞ。どれも、なにがしか魔法がかかっている。わしにもわからんものが、たんとあってな。どんな騒動が起きるかもしれんのだ」館長が注意を促す。
 館長がゾウムシモドキをマユに戻す様を見ていた浩は、
「いったい、何がどうなっちまってるってんだよ」と困惑を

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3.魔法昆虫

「はてさて、いったいどの虫が逃げ出したんだろうか」倉又館長はあごに手を当てながら、部屋中をうろうろと歩き回る。
「マユを見てもわからないんですか?」美奈子が聞いてみた。
「これはしたり! そうだった、そうだった。マユには1つずつ、魔法文字が描かれておるんだった!」そう言うと、百虫樹の元へと駆け寄る。「ふむふむ、ほかの4つは調べなければわからないが、1つだけわかる文字がある。ペッカルト・トラリム・サ

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2.昆虫展

 ラブタームーラの博物館ではいま、昆虫展を開催していた。世界中の珍しい昆虫を集め、休日ともなれば大賑わいである。
「ねえ、美奈。わたし達も見に行ってみない?」薫が誘う。
「昆虫かぁ。あんま興味ないんだよね。それに混雑してるっていうじゃない」美奈子は人混みが苦手だった。
「そんなこと言わないでさあ。わたし、お兄ちゃんがいつも虫採りに連れてってくれるもんだから、けっこう好きなんだ。ねね、付き合うつもり

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1.魔法の授業

 鈴木美奈子は期待で胸を膨らませていた。
 この春、小学2年に進級し、待ちに待った魔法の授業が始まるからだ。
「魔法が使えるようになったら、まず飼っている金魚の色を赤から青に変えるんだ」運良く隣の席となった親友の大沢薫に、目をキラキラと輝かせながら言う。
「あのね、美奈。あんま、期待しないほうがいいと思うの。上級生を見てごらんなさないよ。みんな、言ってるわ。あーあ、今日も魔法の授業かぁって」
「な

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