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フィクションであるべきだったはずのノンフィクション

信じたくない。

これがアラン・チューリングの人生を描いた「イミテーション・ゲーム」を見た感想だ。

(以下はネタバレを含む)

アラン・チューリングは最後にこう言う。
「私のしたことは正しかったのか?私はなんなのか?私は機械と何ら違わないのではないか?」
それに対しクラーク氏は言う。「あなたの作った機械のおかげで何百万という命が救われた」映画の最後のシーンの字幕でも「予定より2年早く戦争を終わらせた」と流れる。

だが、"それが彼にとってなんだというのだろうか"(伝わらない夢水清志郎)

彼はその後同性愛治療と称したホルモン治療で痙攣に苦しみ、唯一の救いであった数学さえも震える手のせいでこなせなくなり、そして治療中に自殺する。きっと上記のようなことを思い、彼自身には彼のなした偉業が全く響かなかった。残ったのはきっと虚無だけだった。

なんて話だ。(n回目)こんなことが現実にあっていいのだろうか。

個人的な話になるが私がここまで深くてこ入れするのはきっとアラン・チューリングに非常によく似た人間を私が知っているからだ。だからきっと全く他人事とは思えなかった。その知り合いにはどうか、彼のような人生を送って欲しくない、心の底からそう願う。

アラン・チューリングには何があれば彼は幸せになれたのか?私はしばらくそれを考え続けるかもしれない。平和か?それとも同性愛差別のない世界か?同性愛なら私のその知り合いは同性愛者じゃないし、世界は平和だ、いや本当に平和か?

唐突だが、私の別の知り合いは戦争に関する映画や過去の映像を好んで見る。その知り合いは国際政治を選んでいた。今初めて国際政治を選んだ気持ちが少し分かった気がする。平和であればアラン・チューリングはああはならずに済んだのかもしれない。とにかく、私はアラン・チューリングのような人間が楽しく幸せに生きていける世界を作りたい、と唐突に思った。生きづらさを抱える人も、楽しめるものに。動かなければいけないと思った、不幸な結末を迎えないために。(インサイトカナー)

心が傷を負っている。

アラン・チューリングと彼に非常によく似た知り合いの類似点について語りたい。

「ぼくは普通になりたいんだ」
これが痛いほどに刺さった。私に、というより知り合いの話を聞いた私に、だが。私の知り合いはこれと全く同じ言葉を口にする。

それから彼と私の知り合いの共通点、周りか見えずによく人にぶつかる、空気が本当に読めない、数学に夢中、人間関係に無関心、いじめられてきた……もしかしたら知り合いは未来のアラン・チューリングなのかもしれない()(半分そう信じている)

人々に貢献できるからなんだ


作中に何度も出てくる、アラン・チューリングが励まされてきた言葉「思ってもみない人が偉業をなす」。物語はその言葉が正義というか正解であるかのようになめらかに締めくくったが、私は果たしてそうなのかと疑う。彼個人の幸せは叶ったのであろうか。あの業績が彼自身に寄与したものはほとんど無かった気がする。以上の情報からも察せられるように彼はASDな気がするが、ADの人というのは何かに没頭し、ある一分野を極度に発展させるために進化の過程で発生したいわば意図的な突然変異、最新型という説があるらしい。(『共感する女性脳、システム化する男性脳』)それでいくと彼は生体としての機能を果たしたことにはなるが、だからといってなんなのだろう。彼自身の幸せは?その才能ゆえ人類に貢献するのは良いが、そのために人と関わる喜びを知る機会が減り、幸せか幸せじゃないか分からない人生を終える。まあでもふつうの多くの人もそうか。でも人間の進化に貢献するためだけに生産されたロボットみたいで可哀想だと思ってしまうのは私だけか。ちょっと自分でも何を言っているのかわからなくなりそうだが、そろそろ「ASDを進化のために生み出した遺伝子を訴える‼️」とか言い出しそうなのでここまでにしてやめておく。

クリストファーは死んだんじゃなくて転校だったのだろうか。せめてそうであってほしいところだ。

人間の会話の言外の意味と鍵がないと解けない暗号に類似性を見出す考え方は分かりやすく、面白かった。ASDはコンピュータ的な考え方をしているのかもしれないね。私の知り合いは幼い頃、外で遊びもせずにずっとパソコンをいじっていたという。自分と同じ生き物だから親近感をもって彼らは接しているのかもしれない。

クラーク氏と私

クラーク氏と私はかなり似ているところがある。クラーク氏と私、アラン・チューリングと知り合いがちょうど相応だ。
同性愛者だと婚約者に告げられた時のクラーク氏の発言「それがなんだっていうの?そんなの知ってた」そこらへんの鉄くずを丸めてできた指輪を渡された時の「変だけどつまらないより面白い方がいい」
数学の得手不得手だけは重ならないがきっとクラーク氏とは友達になれる()
最後に私が一番好きなシーンの翻訳に対するシロート批評を掲げて終わりとする

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