渡英したのでその記録である
今回は第2日目で、1日目は以下の投稿を参照
2日目開始
あさ8時半ころに朝飯があるので起きて食堂へ行く
前回書いたように宿は学生向けの下宿なので、ピアノの練習の音などが聞こえてた。朝から熱心なこった・・・
朝飯
やっぱ郷に入ってはなのでポリッジ(早い話が麦粥
食ったのはウォーターポリッジだった(ミルクポリッジもあった)が、見てくれほどまずくはない。つーか、うまいまである
当然のような顔してベークドビーンズも並んでたが、自分はチリビーンズとかチリコンカンを憎んでるので「エクセプトビーンズエブリシング」というプロンプトで以下のプレートを生成した
Day2行動計画
1日目でならしも終わったのでこっから本気出す日になる
ので本丸のテート・モダンからせめて、有名コマーシャル、ちかくの公立美術館、そんで残り時間はメイフェアに戻って画廊見る、という計画
具体名挙げると
テートモダン
ホワイトキューブ
ホワイトチャペルギャラリー
メイフェア(の画廊)
って順路になる
移動手段は例によって地下鉄と徒歩
ほんとはオートグラフ(Autograph)も見たかったが、移動手段がバスor徒歩だったため断念(ホワイトチャペルから北に行くとある
ちなみに1日目に回ったメイフェアの画廊はこんな配置
むちゃくちゃ密集してて効率いい
テートモダン
その道中
地下鉄Blackfriars駅で降りて、橋わたって、川沿い歩いてくとある
天王洲アイルから寺田倉庫くらいの距離感
で、これがきねんに撮影したテムズ川だが、水質半端ねえな・・・
(上にあるのはオーバーグラウンドのBlackfriars駅
川沿いの小道みたいなとこを進んでくと対岸に見えてくる
この没落帝国を支える金融街が
とか何とか言ってるとついに目的地が!
火力発電所をリメイクした美術館なため、でかい煙突があるのだ
現着
看板の指示にしたがってくと、この「タービンホール口」に到着する
まあたぶんタービン室があったとこなんじゃろ
こっから入るのが正規のルートらしい
入口では例によってドネーションを求めてくるが、こちとら通貨が暴落中のアジアからの貧乏旅行者なので遠慮した
(ただ、マップ代2£の寄付はした
チケットマークあるとこは要チケット(有料)、ないとこは無料
今回は無料だけ回ったが、冷静に考えると(ヤヨイはともかく)フィリップ・ガストンは見といた方よかった気もする・・・
まあ、ヤヨイはソールドアウトなんでどのみちみれなかったんすけどね
マップ的にいうと、赤丸がタダなのでここみてくっちゅう話ですわ。
十分でっしゃろ
さすがにみたもの全部記録すんのはだるいので適当にまびく
ちゅうことで、行くぞっっっ!!
最初の部屋
で、最初の展示室は、わかりやすい現代美術オールスターだった
ブリジット・ライリー
こういう幻覚的な効果がある作品を当時はやったポップ・アートをもじってオプ・アート(オップ・アート、op art、Optical-Art)と呼んでた60年代を代表する作家
これが面倒なのは、(実際に光る)ライト・アートとは別物ってことだ
56、7年のアンフォルメル旋風から65年に至るまでネオダダ~反芸術の嵐が吹き荒れていた日本では、とにかく「なんか名前のついた新様式、しかも絵画」っていうのが神々しかったようで、ライリーは美術誌でもよく取り上げられてる。そうしてキネティック・アート、ライト・アート、エア・アートなどが走り抜けていく
80年代になるとルウィットなどに代表されるシステム的な絵画も登場したあとなので、むしろそっちの文脈から解釈すべきなのかもしんないが、けっこう同時代の日本の作家にも影響与えてると思う
キャプションはライリーが白黒の抽象画からスタートとして、やがてグレー、そしてカラーへと進展していったこと、あとこの作品のタイトルがウィリアム・シェイクスピアのソネット「Shall I compare thee to a summer's day?」に由来してることを説明していた
近くにはエルズワース・ケリーの64年のリトグラフもあった
このあと66年にベネチアで賞を獲ると考えるといい時期のやつだと思う。ハードエッジ・ペインティングと呼ばれる人だ
ケリーに代表されるハードエッジから、ポップアート>アースワーク、ミニマルアートを経て、バッド・ペインティング>ニューペインティングへと欧米の美術は(ざっくり)遷移していくことになるが、日本の場合はハプニング&反芸術の時代から、もの派爆誕>なんとなくもの派っぽい&ミニマル志向>平面への回帰>ニューペインティングっぽいものになり、横尾忠則が絵画やり始めたりして現在に至る
ソニア・ドローネー
こうやってみると60年代としてはすでにクラシックな感じだ
当時から旦那のロベールと同じくらい取り上げられてた印象ある
カルダーのモビール
キネティック・アートになるんだろう
こうやってライリーの作品と一緒に見られるのは趣深い
この近くにはMaria Lalic、Winfred Nicholsonの作品があり、どっちも自分は知らんかったんだけどイギリス出身の人で、地元の人を推してく姿勢が感じられた
そんで猛烈にわかりやすいイブ・クラインのイブ・クライン・ブルー(IKB)
IKB79っすよ、IKB79
キャッチーすぎる
19歳のときにフランスの空みて「これが俺の初めての作品だ」と思った、みたいなことがキャプションに書いてあったが、好きだった高校の先生に家に連れ込まれその先生がヌードモデルになってくれたのに何も描けなくて白いまま残されたキャンバスを見た先生に「これが小林君の初めての作品ね💛」などと言われた小林正人に匹敵するエピソードだと思った
Farah Al Qasimi
次の部屋はこんな感じのファラ・アル・カシミの展示スペースになってた
映像、写真を組み合わせた展示だが、すげえよかった
↓日本語の記事あったので参考に載せる
写真では映像はみれないが、とりあえず展示風景を一通り貼る
ちゅう感じである
とにかく映像がおもろい 音楽も自分で作ってるそうだが、ふつうに見て楽しいもの作ってくれるのはマジで助かる
で、会場での説明もあるが、長いのでgpt4君の要約にしておく
ジェンダーロール、植民地の影響、デジタル消費文化、ハイブリッド化する世界、そして個人的な願望などが織り交ざったものを提示してくれてるので、なんか変な風に極端にならず、味わいが深いものになってるんだろうと感じた
率直によかったのでまた見たい作家だ
次の部屋
いろいろあったが、気になったものは以下だす
3Dプリンタで作られた立体作品
こう書くとバカみたいだが、(しょぼい)3Dプリンタで出力すると、彫刻っていうか、プラモデル的な立体造形物がコピーとして「低解像度化される」ってことに今更気づいておもろかった
で、キャプションは重いことが書いてあるので全部はる
3Dプリンタによる低解像度な出力は「難民、亡命者、国外追放者が住むことを余儀なくされる不安定な空間」を作り出すための手法のようだ
自分的にはこういう話が、結局伝聞やニュース番組というメディアに出力された形でしか受け取れず、すべてぼやけた印象になることを象徴してるのかとも思った
ボイスとホルツァーの部屋
無料ルームではかなりの目玉と思われる部屋
ホルツァーはネオ・コンセプチュアルに属するらしい
(紹介は美手帖の以下を読んでくれ
で、この作品のキャプションは以下
「1970年代後半からテキストベースの作品を作り始め」たらしいが、当時の日本の美術雑誌で見た記憶がないので、これは(かなり)遅れて紹介されるパターンと見た
当時の美術誌はナムジュン・パイクや久保田成子すらあんまり取り上げてくれないのでメディアアートに関してはきほん冷たい
でかいのでヨシ!系の強みを感じるが、キャプションによると複数の作品を組み組み合わせたものらしい
アイロン台の鹿っていのうがボイスっぽい(「タイトルの鹿は、丸太の上にバランスをとるアイロン台で、光沢のあるアルミニウムで鋳造されています」って説明が部屋の説明の方には書いてあった)
いちおうこの部屋全体の説明はこれ↓
また歴史的なやつ
実は間に映像作品とかもあるが飛ばして有名な人出てくるとこ(あんま知らない人も出てくるが)について
フォンタナっぽさとカラーフィールド、ハードエッジなどが共存してる感じのおもろい作品
ジリア・サンチェス(って読むのかはしらないがgpt君の説だ)の68年の作品
ちょっと誰のだか忘れてしまったが京都近美の「現代の動向」展で似たような作品を見た記憶がある(動向展は63~70年に開催されていた)
これも68年なので、こういう伸縮性のある素材で半立体な作品を作るのは世界的な傾向としてあったのかもしれない
特徴的な「パイプ」がばっちり出てるレジェの作品
うおおおペヴスナー! 初めてみた!
ロシア構成主義に「構成主義」って名前つけた人!!
やっぱボイスとかとの関係を考えると、シュプレマティズムや構成主義は無視できないってことなんだろう
そんで隣に並んでるのは当然シュプレマティズムのマレーヴィチ
アルバースのたぶん45年頃(circaついてまんねん)の作品
時代を考えると相当先取りしてる感じもする
このころの村井正則とか吉原治郎とかがもしアルバースと接触できてれば・・・と思ったりしてしまう
カルダーのたぶん45年頃の作品
こうやってみるとめっちゃかっこよいので、当時みんなやられてしまったのがよくわかる
こうやって実作みると、影もすげえいい感じだし、それを見せてくれる照明も素晴らしい
フォンタナ!! 空間主義!!
この作品を64年にテートは買ったらしい えらい
ヴィエイラ・ダ・シルヴァの50年の作品
ぜんぜん知らんかったんだけど、河原温の初期作品に似たような傾向があると思った。時代的にも近い
これも53年に買っているらしいが、正直すごい
あとはクリストもあった(作品名メモってない)
他にもゴンチャロワの作品あったりしてよかったんだけど、スルー
まさかのミン・ウォン部屋
なんかみたことあるなと思ったら、ミン・ウォンじゃねーか!っていう部屋があった
すげえ人だったんだな、という気持ちでいっぱいである
(↓以下にそのミン・ウォン「宇宙歌劇」についての記事がある)
そんで映像作品が上映されていた
ビヨンド・ポップ
っていう説明のある広い空間に来た
が、けっこう混んでたのであんまり写真撮ってない
クリッサのライト・アート
日本でもこれやってる人たくさんいたし、いまもいる気がする
ホックニーと同じく具象絵画やってポップアートの先駆け的な人になったRBキタイ
まともに見たことなかったので助かった
片山真理からの「具体 Gutai」
ここで日本の作家がどかんと来る
とか言ってるが、実は写真撮ってないだけで、ここまででも小清水漸と菅木志雄、安齊重男のいろいろな70年代の東京の展示写真、あと工藤哲己のあのちょいグロイ立体作品ががっつり展示されていたので、日本の作家は実はかなりの分量で展示されてる(これについては最後にまた書く)
そんでもって隣の部屋行くと「具体コーナー」が広がる
見たことないのが多くて大興奮!!
長いが素晴らしい解説なので全文引用する
リアルタイムで具体をみてた日本の批評家は「タピエの通従者」くらいにしか思ってないようだが、(千葉成夫などが指摘している通り)「前期具体」の活動こそ真の具体美術なんだよ!っていうことを言ってくれてる最高の解説
スカイフェスティバル(アドバルーンに作品括りつけて屋上から飛ばした展覧会)まで言及してるのがすばらしい
本物見れて最高にうれしい嶋本昭三の作品
54年ってことは小原会館に展示したやつなんじゃろうか
それはともかく、「2002年にアーティストによって寄贈」って書いてあってびびった
なんで日本の美術館が収蔵してないん???
有名な村上三郎のパフォーマンスを撮影した大辻の写真作品
これも「2019年アジア太平洋購買委員会の資金提供により購入」とのことなので、最近収蔵されている
田中敦子の電気服パフォーマンス写真
田中の絵画作品の展示には、この写真も並べてほしいというか、何かしら配慮してほしいと思う
でないと平面に閉じ込められ、その先駆性の大部分が死ぬからだ
このテート・モダンに並ぶ50年代のどの作品と比べても、田中のやってることが一番尖ってる
パンリアル美術協会と具体、どっちにも所属したことがある珍しい人
作品初めてみたが、確かに日本画感ある
62年ということはアンフォルメル以降だが、ほとんど流されてない感じがして強い
解説では白髪一雄への言及があり、白髪のネームバリューがよくわかる
名坂有子の作品、本物初めてみた
「2017年 アート購入基金により購入」とのこと
麻布にこだわりのある前川強の作品
前川作品も初めて見た
この他に小野田實の、もう絶対に小野田實以外ありえない作品もあったが、写真がひどかったのでここには載せてない
全般的に収蔵されてる具体の作品は
・前期具体のパフォーマティブな作品
・60年以降、具体第二世代の平面作品
となっててる
こうすることで、そもそも具体が一番輝いてるところのと、アンフォルメル以降の(つまんなくなったといわれる)平面作品が多くなり始めた具体の姿の、両面を見せることができる
たぶんこのキュレーターもそう思ってると思うが、「具体はアンフォルメルに収れんしていってつまんなくなった説」は表面的すぎる
テートモダンの全体的かんそう(いい加減疲れた・・・)
駆け足でみたテートモダンはこんな感じである
もっとバエる展示いっぱいだったが、鑑賞の事情もあってとってない
(リキテンスタインの部屋とかは授業中だったりした
で、とりあえず見た感想を挙げてきたい
自国の作家を頑張って紹介してる!
まじでこれ。堂々とイブ・クラインの前に飾る
外国の美術館で展示されないんなら、自国の美術館に置くべき
どっちかっていうと、日本はこの逆をやってる気がする
部屋ごとに傾向がわかりやすい!
で、↑を可能にするのがこの「傾向ごとのまとめ」である
なんか「色彩と形」みたいな部屋なら有名無名問わず、そういう傾向の作品をならべられる。クラインとケリーとしらん人並べる理由ができる
まあ単純に見る方にとってもわかりやすいというのももちろんある
ガキが多い!
ここだけじゃないが、これはマジでショック
小学生くらいのガキがマレーヴィチの絵にたかってる
自分は美術教育すべき派じゃないが、もしたまたま才能ある子がいたら、そいつはものすごいスタートダッシュ決めそう
斎藤義重がたまたまガキのころロシアの作家の展示見て目覚めた、って話してたと思うがその発生率増やせる
美術館の職員がめっちゃしゃべってる
客いなくてもがやがやしてる
日本だと文句出そうだが、さっき書いた通りガキが走り回ってるのでぜんぜん気にならない
おかげでこっちもふつうに会話できる
日本の作家すげえ取り上げられてる!
マジで?ってくらい扱い大きいが、その反面いろいろ思うところある
日本代表は「具体」な件
一番大きく取り上げられるのが「もの派」じゃなく「具体」だってこと
これはある意味しょうがないところがあって、具体はちゃんと「具体グループ」が存在するのに対し、もの派は別にグループじゃない
なので美術運動体としての紹介のしやすさは具体だろう
また、単純に活動のレベルとしても50年代にパフォーミング、テクノロジーアートをやった具体は世界的に見て異常な目線の高さにいる
ポロックはアクション・ペインティングやってたかもしんないが、こっちは白髪がセメントの中のたうちまわって、元永はビニールに色水ためて、村上は紙に体当たりし、田中は電気服着て踊ってたんだから、「ペインティング」どころの騒ぎじゃない(まあ、それを当時の批評家は完全にスルーしたんだけど・・・
一方の「もの派」は、ちゃんとリアルタイムで理論化しようとしてた美術運動として画期的なものだったが、世界的なミニマルアート、プライマリー・ストラクチャーの潮流があった中なので、突き抜けて先行してたか?と言われると若干もにょる
なので現代美術の中で、それもWW2直後に起こった美術運動として見ると、「具体」が世界的にみても稀有なものとして評価されるのは正統だろう
もちろん、もの派も無視されてるわけじゃなく、テートモダンでも実質的に語られてはいる
菅木志雄、小清水漸、高松次郎、といった真正もの派からもの派周辺の作家、そんで菅の活動他を写真に収めてきた安斎重男がいれば、十分フォローできてるといえる
で、この具体とかの常設展示が日本(東京)ではない件
まじで困る
なんでって、こういうことが起きる
大阪中之島美術館ならまだ少しは常設にあるが、東京は壊滅的だろう
現代美術も浮世絵みたいなことになりそうだ
などと言いつつテートモダンを後にするのだった
ヤヨイに見守られて!!
※くっそ長くなったので2日目のこの後は別記事にするわ!!