【メンタル】第3報 不調の原因を考える
なんで?
シンプルにそう思った。
思い当たる節が全く見当たらなかった。
後に分かることだが、『突然の事故』くらいに感じるほど、自分が置かれている環境の異常さにも、心身の異常にも、全然気づくことができない状態に陥る。
風邪を引けば「汗をかいたままクーラーの下で涼んだからかな」とか、インフルエンザにかかれば「同僚がかかったらしいし、同じ会議室で打合せた時にうつったかな」と、思い返すだろう。
同じように、最近の行動を振り返った。
薬品にやられたかな…
ちょうどその頃、担当していた実験の工程の一つに特殊なものがあった。
使用する薬品は神経系や生殖系への異常報告が出ているもので、厳重な保管と取扱の規定があり、社内の安全教育も特に厳しく行われていた。
しかも、使用方法が特殊で、規定範囲内とはいえ、事情を知らない人は顔を顰め、出来るだけ近寄りたくないと思う内容だ。
場合によっては専門業者へ外部委託する内容でもある。
一方で、その工程を経なければ私の仕事が成立しない、という位置付けだ。
もちろん、身体に触れたり、蒸気を吸引したりしないよう、可能な限りの安全対策を講じ、注意深く使用した。
しかし、使用直後から頭がぼんやりして、鈍痛を伴う吐き気がし、時折、耳の中ににキーンとした音と痛みが走った。
車の運転中に頭が重く感じ、フラフラになりながら帰宅したこともあった。
最近頭を悩ます人間関係…
人間関係で悩むことなんて、誰でも経験することだと思う。
もちろん、私自身も過去に経験していた。
幸いなことに、何かあっても味方になってくれる人が必ず現れ、助けを得られていたので、深刻な事態に陥ることはなかった。
しかし、最近は違った。
他の社員が嫌煙するほど、身勝手な行動や発言を繰り返す後輩らと、無責任に取り合わない上司との板挟みに遭い、さらに、年長後輩の傍若無人な態度に悩まされていた。
諸先輩方に相談し、助言や手助けを得、仕事を前に進めようとしたが、彼ら全員が自分以外を見下し、まともに仕事をしない、という状態が続いていた。
もちろん、遅々として進まないので、リーダーの私は定例会議で厳しい言われ方をすることもあった。
また、ジェンダーが関与する部分で、直属の男性上司からの理解が得られなかったことは、諸先輩方も途方に暮れるほどの状態だった。
同僚の女性社員(ワーキングマザー)からは度々、この上司が女性を下に見る傾向にある、と聞かされていた。
下に見ていたかどうかはさて置き、女性社員やワーキングマザーのキャリアに、理解を示そうとしない発言や態度はあった。
「出張中は誰が子どもの世話をするの?」と言われ、なかなか出張許可を出してもらえなかったり、ミーティング開始時間を保育園のお迎え時間に設定されたりといった、メディアでもよく目にする事例だ。
当時、私自身は妊娠を考えており、身体、特に生殖系への影響が非常に高い薬品の使用には強い不安を感じていた。
「妊娠を希望しているんでしょう?危険だから、すぐに実験担当を変えてもらったほうがいい」という、他部署の女性社員らから経験上の忠告も受けた。
それを聴いて不安が増し、断れるなら断りたかった。
何度か上司に不安と協力を訴えた。
また、対策として、他部署では女性社員の使用を制限しており、その工程のみ男性社員が実施したり、外部委託したりしている事例を挙げ、これを取り入れて欲しいという希望を出したが、理解が得られなかった。
むしろ、やる気が無いとみなされ、人事評価が下がることを暗に示唆され、これを回避するには、異動か、転職か、という状況下にあった。
まだ見ぬ未来の命に比べれば、一時の人事評価などどうでもいい。
重要なのは、『危険性の高い試薬の使用による身体への影響』か、『妊娠出産前の職場環境の変化』か。
何度も天秤にかけた結果、前者を取った。
いま改めて、行動を振り返ると、希望する状態(妊娠出産)に対して、それを危険に晒すような選択をしている。
しかし、
仕事や職場を変えるのはリスクが大きいと思い込み、なによりも、この研究を突き詰めていきたいという欲、そして、早く結果を出して安定したポジションを築きたいたいという保身が、気持ちの大半を占めていた。
そんなもの、命には変えられないのに。
以上
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