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世界と繋がる芸術論

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何をどうしたらアートになるんだろう? ひとつの問いから始まった思索は植物、幽霊、身体、AI・・・ そのとき出てくるがままに分野を横断しながら、次第に自分とは?生きるとは? そんな…
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2023年1月の記事一覧

世界と繋がる芸術論1+2

世界と繋がる芸術論1+2

   どうしたらアートになるか問題 1

(以下の文章は2017年8月から2021年9月の間に書かれたものです)

七年くらい前だと思う、東京の森美術館へコルビュジェ展に行ったとき、別室では障害児施設「ねむの木学園」の子たちの絵画展も開かれていた。建築家ル・コルビュジェが描く絵は、ピカソと聞いて思い浮かべる絵を想像すると大体そんな絵を描いていたので、その時もピカソの絵が数点、飾られていた。ピカソの

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世界と繋がる芸術論3+4

世界と繋がる芸術論3+4

アートになるには問題 3

 
想像力とは、いったいどんな能力のことなのだろう。
ゴリラは二、三〇頭の群れで暮らしていて、仲間の結束は非常に強いが寝るときは一匹に一つのベッドを毎日作るくらいには自己と他者が分かれているらしい、仲間の死を悼む光景が見られるなど自我や死の認識も備わっているとも言われている。しかし、一度群れから離れた個体はよそ者とみなされてしまい、二度と同じ仲間として群れに

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世界と繋がる芸術論 5+6

世界と繋がる芸術論 5+6

 世界と繋がる芸術論 5

 
芸術とは単なる自己表現のためのツールなどではなく、自己の内面を通して世界を描き表そうとする試みのことだ。それを可能にするのは、精神科医・中井久夫の言葉を借りれば
「イマジネーション(想像力)の自覚的表現」
である。たとえ自己表現であったとしても、それが自分のなかに既にある材料を取り出して繋ぎあわせるようなものじゃなく、意識的にであれ無意識的にであれ自分という枠の中で

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世界と繋がる芸術論 7+8

世界と繋がる芸術論 7+8

世界と繋がる芸術論 7

 ある作品なり時間が芸術になるために必須の要素である想像力とは、自分のなかで閉じたまま完結する妄想や空想ではなく、外の世界=現在だけにとどまらない過去や、もしかしたら未来の人間、動物、さらに植物など生物全般、はては石や土といった無機物まで、文字通りこの世界を構成するあらゆるもの=と繋がるために駆使される能力のことだ。
 ただ世界と繋がるといっても、人間同士ならまぁ当然、動

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