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世界と繋がる芸術論 5+6

 世界と繋がる芸術論 5

 
芸術とは単なる自己表現のためのツールなどではなく、自己の内面を通して世界を描き表そうとする試みのことだ。それを可能にするのは、精神科医・中井久夫の言葉を借りれば
「イマジネーション(想像力)の自覚的表現」
である。たとえ自己表現であったとしても、それが自分のなかに既にある材料を取り出して繋ぎあわせるようなものじゃなく、意識的にであれ無意識的にであれ自分という枠の中ではなく、その外に広がる世界に繋がろうとする試みであるならば、自己表現も芸術になるということを示している。そして、そのときに必要になるのがイマジネーション、つまり想像力なのだ。
それじゃあ想像力とはどんな力なのか。この連載の三、四回では想像力がいわば拡張された身体感覚であり、その感覚を表す器(言葉の語彙や音楽、色、整体、幽霊…etc)によって現れ方が変わる、あるいは器がなければ本人が自覚することもない、ということを考えていた。僕が想像力を「世界と繋がるための能力」と捉えるのは、想像力が身体感覚である以上、あり得ないことを空想したり妄想したりする力であるよりも、もともと世界を認識する能力として持っているものだと予想できるからです。荒っぽく言ってしまうと、聴覚とか視覚とか嗅覚と同じようなもんだということです。

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