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「パーティーが終わって、中年が始まる」

pha 「パーティーが終わって、中年が始まる」 (幻冬舎)

自分とはまるで違う・・・のに、時々すごく共感できる部分を持っているphaさん。

基本的に自分”よくわからない名前の人の本は読まない”ってユルく決めているフシがあるのですが、phaさんの「しないことリスト」は数少ない例外で。

そんな彼がちょっと気になるタイトルの本を出してきたのでとても気になっていました。

「そうか、そんな時期が来たんだ」・・・という思いとか、「中年もそんな悪くないよ」なんて思いとか。

読み進めていくと不思議な感じになっていきました。

帯の裏面には「そうか、人生がすべてが一回きりの本番。世の中の仕組みがようやくわかってきた」とあります。

多くの人は「何をいまさら・・・」的な反応を示すんでしょうか?その歳になって、そんなことを言っているなんて・・・的な。

自分には到底そうは思えませんでした。

自分が中年になる頃・・・30過ぎ・・・と言ったら東京を出て、長野に来て、いろいろ再スタートといった頃。

そこから迷いに迷って、今のスタイル・・・レギュラーの仕事は持ちつつ、しかし深入りしない。代わりに”本屋”という気持ち的には中心軸となる仕事を持つ・・・にたどり着いたのは40過ぎてようやく、という自分ですから否定する気にならないのは当然。

しかしそれ以上に感じる何か。

少し考えて。

そうか。

著者にとってこの本を書くきっかけになったタイミングは、自分は結構前に通過した場所だったんじゃないかな?と。

学生時代。

周りのみんなが現実的に企業への就職を決めていく中、何か違和感を感じしかし何もできなかった自分。おいていかれる感覚。

おいていかれる感覚はそのずっと前にもあったな・・・あ、自分はせっせと川に通って釣りしていたのに周りはいつの間にかみんなファミコン・・・って時だ。これは少し違うか。や、でも寂しさは同等だった気がするぞ・・・。

閑話休題。

もちろん早ければいい、遅い方がいいといった話ではなく、その時の感覚にそっくりなんじゃないか?と思い当たりました。

そんなふうになりたくないのに、ある程度折り合いをつけなきゃいけない。そうしないとどうやらやっていけないらしい・・・そう気づいた時の悲しいような、大げさに言うと絶望的なようなあの気持ち。

家・音楽・人間関係・・・例を挙げつつ著者は自分の立ち位置と周りとのズレのようなことを淡々と・・・いや、少し寂し気にか?・・・語っていきます。
ひとまとめにしてしまうと「人それぞれ」という極めてつまらない言葉に集約されてしまうのですが、本当にひとそれぞれ、各分野においてこういうタイミングが訪れるのかな?と思います。自分と周りのズレというか。

ここに違和感を感じ、言葉にするというのはジツは勇気のいることなのかもしれません。周りは(おそらく)ほとんど誰もそんなこと言っていないでしょうし。少なくとも自分のタイミングで自分の周囲は、そうだったな。

しかしですよ。

先に挙げた”何をいまさら・・・”型の方々って本当に経験から理解を得た上でそう仰ってるのでしょうか?もっと雑にいってしまうとわかっててモノ言ってるんでしょうか?本当?と訊き返したくなります。

抽象的になりますがいわゆる”レール”に上手く乗って生きていける(これた)方々って、この手の考えにぶち当たることってないと思うんですよね。

”転落型”の一種である自分は、違います。
イチイチ立ち止まって、納得して、それから実行できることを考えて・・・じゃないと先に進んでいけないんです。自然に事が進んでいくとか、最初から何かがうまく行くとか、ありえないんです。

だから著者の”いまさらな気づき”にも大いに納得がいく。

自分の場合”その上で得た今”、だからこそ満足度がとても高い。キツかった時期はとてもたくさんあったけれども。

だから冒頭の「そんなに悪くないよ」という気持ち・・・そこを超えた・上手くうっちゃった時はなかなかいいもんだよ、という・・・にもなれるのかな?なんて思いました。

うまく行かなかった・うまく行っていない・・・なんて時。
いわゆる壁にぶつかってしまったとき。

中年というくくりは外して、そんな全ての方々にヒントのひとつとして読んでほしいと思った本です。


※リンクがamazonなのはamazonで買って欲しいということでは決してなく、単に見やすい・調べやすい・・・ということです。誤解なきよう。



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coldmountainstudy  店主:鳥越将路


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