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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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2021年3月の記事一覧

TomoPoetry、さくらいろの記憶。

TomoPoetry、さくらいろの記憶。

あちらこちら
白と水玉と
ピンクの川
ゆらりゆらり
流れているのか沈むのか
光は水底に溜まり
わたしの頭にも
吹雪のようにちりぢりの記憶が
黒く白く
赤く
句読点だらけに
残っている

なにも知らない風情の空を
フラミンゴの雲がとんでいく
ふらふらしている
アフリカの空
心もとない
銃声で
波打ち
わたしは現在にもどる
右に左に大きくずれる空
血にちかい桜色だ
過去はいつも

あなたの輪郭の
内側

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Tomo Poetry、きみは生きるだろう、春風のように。

Tomo Poetry、きみは生きるだろう、春風のように。

あなたは生きる
十年あるいは二十年 あるいは
三日か三時間
マネキンの群れのなか
焼け落ちた映画館の記憶
海が溢れるベッド
靴音響く下水道
回転しつづける銀河の底
割れた万華鏡のなか
あなたは生きるだろう

首に巻いた快楽
ポンプで押しあげる苦痛
星が胸のまわりをめぐるのを
呆然と見る
あなたは疑問に思う
どうして快楽そのものでなく
スカーフなのか
どうして苦痛そのものでなく
寒流と暖流の海図

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Tomo Poetry、世界のなかのわたしとわたしのなかの世界。

Tomo Poetry、世界のなかのわたしとわたしのなかの世界。

世界が生まれる
正確には
わたしは脊髄で知る 
わたしを抱く手のひら
羽の形の眠り
土筆のいのち
わたしという痛み
クリームなしのシュークリームの甘さ
雲と海の泡からコスモスを
練りあげる手
手を開くと
世界は
青い星雲のように
回転している
きらきらと

世界には
天婦羅屋の燃える油
湯からあがる
死んだ祖先
崩れていくラフランス
皿にはトマトとアスパラのカレー
全ての死と
明日のために
歴史の

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Tomo Poetry、ゆらやら夢が浮く空。

Tomo Poetry、ゆらやら夢が浮く空。

一日の最初の言葉は
溜息に浮かんでいる
聞くことはできない
そして足音
あおい窓ガラスのなかで
秘密に行われた髭剃り
くるくる回ったトゥシューズ
メロンの種すくい
骨壷にしまわれたカラーフイルム
テーブルに水の星
修道士がステップするたびに
傾く立方体
天体図は波打ち
地球はころがる
でこぼこの坂を

悲鳴と笑い
意味深い言葉は語られない
地球が壁で止まると
大きい溜息
安堵のあたたかさ
落胆した

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Tomo Poetry、時がすべりゆく。

Tomo Poetry、時がすべりゆく。

挽肉を丸めながら
月を薄く伸ばしている
手のしたを
すべりゆく
銀河系星雲と海星
カナダの黄金の波
乾いた皮膚の獣
まだあたたかい青い肉体
すべてがすべり落ちる
螺旋状の
時のすべり台
喚声に悲鳴そして沈黙が
ながれていく

銃の列の上を
蜻蛉が渡った
赤い星のように
宇宙に
飲み込まれるために
時をたぐり寄せ
あなたの魂は
教会の鐘楼をつなぎ
河をみちびき
まるい星をころがす

一日を丸めると

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Tomo Poetry、はるの地にいのる。

Tomo Poetry、はるの地にいのる。

黒い土に横たわる春
天は銀
流れるのは純白の鳥
青いトゥシューズが地表ではねる
背の下では
プラスチックの球から
やわらかいアオマダラの羽
徐々に
ほそい指のように
なにかを抱くかたちになる

キャベツが洗われる
雫にまぎれて涙が落ちる音
わたしの人生を
かなしんではいけない
あなたはまもなく
風の歌を聴く
とおい歴史から
傷や黴
虫と凍った星
それらの削りおとされる音
最も古い窓を
遠くからの風

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TomoPoetry、春のかなしみ。

TomoPoetry、春のかなしみ。

春が空に鋏を入れる
細くほそく
子午線にそって
中世の旅人の足跡の速度で
かがやく刃を
やさしく滑らしていく

万華鏡の黴
数世紀息をこらしていた下着
青い石のボタン
満月を埋めた眼
傷つけないように
はだかにする
ときに
気づかれないように
心を奪われないように
キスをしながら

歴史のなかの春
口にひろがる

スカイブルー
昨夜の死者の
眼に見た宇宙
まんなかにミントの星
舌にのせる
あまい

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Tomo Poetry、きみだけの朝。

Tomo Poetry、きみだけの朝。

きみの朝
氷のブルー あるいは
グリーンのフルート
蒼い星が膨らみ縮み
音楽が聞こえる
口笛のように
フールフール
ブルーブルー
フルフィルハーモニー
香ってくる
前世紀フランスのパンケーキ
焦げついた地図を
手にのせて
薄く脆い
記憶

数世紀
脚を失ったきみは
白紙の地図に点描した
透きとおったグリーンとオレンジに
変わりゆく髪の色
軍隊はカメレオンのように
砂漠をジャングルをくねり
きみ

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TomoPoetryー春、ゆらめきながら歩む。

TomoPoetryー春、ゆらめきながら歩む。

右手人差し指が
人生のセレナーデを辿っている
あるいは 指揮で
まとめている
地表に経線と傾いた
日の歩みの跡

日比谷の水際
フィリピンの排水路の湿り
消えていく足跡を
踏みしめながら
わたしたちはゆれる

今日いちにちだけ
梅と桜のあいだをゆれ歩く
生きていることを思い出すために
口からはのぼりつづける鳥の
止むことのない歌
フリュートを
持つ手は春風のようにゆれる

地は揺れつづけてきた

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Tomo Poetry、春の雨にぬれて。

Tomo Poetry、春の雨にぬれて。

あなたはいつも
罪人のようにびっしょり濡れている
眼は水平線の色
銀のかがやきとほそい墨
海でできている
うなじからお尻は
時にうねる
降りつづく
春の雨

キッチンはひたひたと
書棚も湿り
窓から涙がしたたる
あなただけの海から

わたしは遥かはなれて
乾いている
歴史のしばらくの波間で
膝に氷った記憶
渇いている喉
あなたが見えているかぎり
正座する
びっしょり濡れているあなた
産まれきて

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TomoPoetry、日々かぞえる。

TomoPoetry、日々かぞえる。

かぞえる
残された朝の数
アスファルトを叩く杖の音
開いたドアをとおる風
安堵したおなら
トイレに座っている尻の数
成層圏と海面のあいだの血圧
道端の牛の印
ブリキ人形の足が蹴る宙
海鼠が呼吸するまでの
よせる波
ふかく深呼吸せよ
二十分回れよ
ガンジー、ガンジス、パンジーの紫
惑星がめぐる血管
身体を通過する宇宙
時に春の風
魂の引っ越し
記憶を手繰り歩む万年筆
空白のカレンダー

群青の正の字

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TomoPoetry、春が駆けてくる。

TomoPoetry、春が駆けてくる。

瓦をかたかた鳴らして
駆けてくる春
どこの窓まで あるいは
どこの河原まで
ながれる骨と
崩れゆく輪郭
凍った子午線を
支える
きみの呼吸
ふかくふかく
過去とかなしみの湿り

下半身を失った春が
駆けてくる
午後の陽射しに背を押され
すべてが滴る前に
歴史を記すことなく
水に覆われる前に
急ぐ時の
息切れが近づいてくる
冷や汗が背後にてんてんと
涙のように
魂から搾られた夜露のように
連なり

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Tomo Poetry、ねむりつづけたきみが来る。

Tomo Poetry、ねむりつづけたきみが来る。

呼吸する珊瑚臍からころがる卵背を愛撫するアンデス山脈ねむりつづけるきみとわたしたちの未来老いた新芽わかわかしい木乃伊わたしたちが洞窟に揺れる時代がきて夜明けのひかりにきみは身を起こす星を手のひらに天体図を切り裂き遅れて落ちる光をゆらしながらあゆむきみの足にまつわる星雲はうすかすみわたしは落ちるきみの耳殻に沿ってあたらしい音楽ととおい悲鳴に時に弾かれながらわたしが眠りから立ち上がるはずだったあるいは

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TomoPoetry、ことこと鼓動する天空。

TomoPoetry、ことこと鼓動する天空。

マゼランが踏み外した太平洋
海面がとぎれるところの
ため息の青さ
マルコポーロが跨げなかった裏路地
映像が吸いこまれる先の
闇の湿り
肉体が鼓動する
あたらしい生命が
あたらしい視界を
這っていくように
地をびっしょりに

海の深みにキスしながら
歴史の闇の奥に
鼻をつけながら
道をたどる
ことことコトコト
骨がなる
骨は空の光で
満たされている
深夜に散乱する銀のこまかさ
早朝の爬虫類のつめたさ

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