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Tomo Poetry、春の雨にぬれて。

あなたはいつも
罪人のようにびっしょり濡れている
眼は水平線の色
銀のかがやきとほそい墨
海でできている
うなじからお尻は
時にうねる
降りつづく
春の雨

キッチンはひたひたと
書棚も湿り
窓から涙がしたたる
あなただけの海から

わたしは遥かはなれて
乾いている
歴史のしばらくの波間で
膝に氷った記憶
渇いている喉
あなたが見えているかぎり
正座する
びっしょり濡れているあなた
産まれきて
死にゆくものの
濡れている季節
生きているものの
最低の礼儀だ

わたしの隠れた脚は
水に洗われている
染まるためか
清めるためか
足先から泡立ちはじめている

あなたが乾くことはない
わたしもまた
いつの季節も
水に浸かっている
びっしょり濡れたまま
座っている
向かい合って
春の雨は
あなたの眼から降る
新緑のように
わたしを濡らし洗いながら

わたしの輪郭がとどめていた罪が水を染める

群青の綾が
波打つころ
あなたは
わたしを宿している

わたしの輪郭は遥かかなたの星雲のように
過去の色と形をしている

このまま
春のかなしみそのものになるまで
乾く希望が消え去るまで
水としてながれよ
おびただしい生のさみしさを
雨で洗い
凍えた記憶を
あなたの深みに沈めよ

びっしょり濡れつづけるといい
わたしは
泡立ち流れになりつづけよう
椿の傾いだ首のように
寝室のシーツのかなしみのように
魂が棺からあふれ
低くひくくながれるように
濡れていよう
びっしょりと
立ちあがることを
許されるまで

あなたは海のままでいるだろう
地上がびっしょり濡れているのは
生存の意味が溢れているからだ

そろそろわたしの血が星を覆い
葡萄酒の底に沈みゆく
酒が器からあふれる

あなたが立ちあがる
その時 わたしも立ちあがるだろう
春の雨に洗われた
芽の明るい色と姿勢で

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