Tomo Poetry、ゆらやら夢が浮く空。
一日の最初の言葉は
溜息に浮かんでいる
聞くことはできない
そして足音
あおい窓ガラスのなかで
秘密に行われた髭剃り
くるくる回ったトゥシューズ
メロンの種すくい
骨壷にしまわれたカラーフイルム
テーブルに水の星
修道士がステップするたびに
傾く立方体
天体図は波打ち
地球はころがる
でこぼこの坂を
悲鳴と笑い
意味深い言葉は語られない
地球が壁で止まると
大きい溜息
安堵のあたたかさ
落胆したラジオの雑音
ミントアイスクリームのような
窓ガラスが
凍る正午
星は水の宇宙に浮く
コロンブスの夢
ナポレオンの死
わたしの夢は
星雲のように
回転しながら浮かんでいく
都を見おろし
右手で掬いとる
何本も滝が落ちる
ルイヴィトンが水で満たされる
世界地図の海岸線は
白い真綿
過去に水葬されたフラミンゴが
濁点を打とうとしている
両手で
虹のような星を
やさしく浮かせる
シャボン玉のように
のぼっていく球体
あざやかな夢が
巡っている
わたしたちの眠りの間
銀河のように
回っている
一日分の呼吸
一日分の肉体を
まるい実にして浮かべる
トマトのように
ピンクのガムのように
赤い言葉のように
夢で埋まった空
歩きながら
わたしたちは帰る道を探す
夢は死者といっしょに夕空に浮かぶ
失われたところを埋め合わせるために
わたしたちの空に漂う
たくさんの言葉と
溜息と
最後に残った
湿った夢
一日の扉をくぐる
一日はそこで終わる
夢は
わたしたちを見ながら
永遠に
凍えている
夢がない眠り
なにも聞こえない
見えない
静かな空には
濡れた夢
海月が浮かぶ
聞き取れない言葉
誰のものでもないトルコ石の星
罅におおわれ
木乃伊のお面のように
浮かんでいる
やがて崩れて砂になる
電車の足もとをながれる砂丘
さらさらこぼれる眠り
星から
死者の願いのような夢が
わたしたちの
からの肉体を満たす
毎朝
からっぽのあなたは
忘れかけている夢を
洗いながし
あたらしい夢を受けいれるために
冷たい水に
顔をつける
洗面器の底に
星の埃が積もる
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