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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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2020年12月の記事一覧

のこしたもの、それは。

のこしたもの、それは。

ギター三本八万円
カメラ12個六万円
本 数千冊二千円
身体を灰にする費用十五万
交通費一万
なにも残らなかった
連れ合いがいう 

あっ 年金が
鼠といっしょにたべるくらいはある

ねぇ ひとは死んでそのあとどうなるの
きみは何度かきいた
柿の種みたいに地から芽を出すよ
また 嘘だ
いや本当に芽を出す
芽をだしつづけて
散る花粉のように
わたしたちは会話し
交わり
散っているではないか

でも 

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TomoPoetry、朝の鬼、まだ早いのに。

TomoPoetry、朝の鬼、まだ早いのに。

鬼は
現在そのままのように
過去に書きとめられているように
歴史が語るように
あかい眼で睨んでいる
わたしを
わたしと出あわせたなにかを
言葉にしようとするわたしを
憎み たぶん
恨み たぶん

鬼は知っているのだろうか
どうしてわたしと出あうことになったのか

わたしは鬼になにをしたかおぼえていない
鬼よ わたしはきみが好きだ
きみはなにを怒っているのか
おしえてくれ

頭のうえに地球儀 それと

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TomoPoetry、ねぇ、おとうさん カニカマって。

TomoPoetry、ねぇ、おとうさん カニカマって。

ねぇ おとうさん
カニカマって蟹でできているんだよね
蟹 と
かまぼこといろいろなものでできているんだよ
ひとって命でできているんだよね
むつかしいことを言うね ううん
それとも魂でできているの
だって ヒトダマって言うじゃない
すると 死んだらひとではなくなるの
おじいちゃんが死んじゃたとき
もう 向こうへ行きなされと
おばあちゃんが言っていたけれど
向こうにいるのは
ひとではないんだ
もしかす

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TomoPoetry、どこへ向かうか、きみは。

TomoPoetry、どこへ向かうか、きみは。

白鳥の嘴は
天をつつく 
向こうには群青の壁
拍手で背は
まっすぐになる
二、三個川の向こうに落ちる

支えていたもの
人参なような鋭利なもの あるいは
鈍い饅頭の
おもさをもつもの
すべてを
朝 まな板に立てる
向こうへ行くならば
同じだ
後悔も
かなしみも
笑いもない

股間へ滑り落ちるものがあるなら
ゴム製の地球儀
錆びた包丁
もう観察の意味はない
上にのるのは
白髪や化石のひまわり
安いけ

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きみは鳥の歌をうたう

きみは鳥の歌をうたう

空を摘む
嘴は
金属の糸鋸ではない
箸立てに残ったプラスティックの箸ではない
爪 あるいは
魂のやわらかい外周

宇宙をふたつに最初に斬る
斬るのも斬られるのもきみである

きみは生きていくにはやさしかった

きみは今日も飢えているだろう
大蔵省の七階の窓
富士の
裾野の
言葉がない箱
わたしたちより悶えている闇
そこをひかりが
どこかへ抜ける

きみはその行き先を知っているだろうか

肉体も魂も

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TomoPoetry、また、また、時は捩れを加える。

TomoPoetry、また、また、時は捩れを加える。

拒絶する
きみは なにを
わたしは なにを

世界があたえるもの
必要な食事と
できるだけ深い眠り
野菜少し そして
歴史をまるめたナプキン
時間をスライスするナイフ
それを味わう口

きみの唇は
エジプトの王妃のミイラの口紅の
ふかく時間が染みている
脚を包むのは
ブロードウェイの
車輪の軋みを伸ばした
ストッキング

わたしたちの友人は
高速道路で
はるか遠くの見えないもの
握っているレバーの

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TomoPoetry、ひと月を捻ってしまう。

TomoPoetry、ひと月を捻ってしまう。

きみの外でも内でも
暮れていくものがある
青空に描かれた良識が
湿りはじめる 
シベリアのキャベツのように
フイルムがカラカラ鳴りはじめた
深夜降りつもるカラスの羽のように
歩道はしずかだ

ケンタッキー人形のように
国家はコンコン響かない
牛丼に添えられる紅生姜のように
社会は口にはこばない
柱が傾きゆく家
信念がすきとおりゆく時代
きみとわたしの影は
ゆるやかに色を変え
カレンダーの頁の
パス

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TomoPoetry、ある午後の散歩。

TomoPoetry、ある午後の散歩。

都市の地図から
少女の肌のいろが消える
老いゆく薔薇の絡まりが細切れにされる
純白の皿に
乗っかっているのは
あなたの欲望と
ひとびとの過去を刻んだ
炒めもの

わたしの皿には
四季の野菜の記憶
塩と死だけで食べてください

脚を包むストッキングは青
動かない肉体をくるむのは
青を真似た
ビニールシート
内側で宇宙はうごきつずける
とおくへ
遠くへと

死体からできるだけ遠くから
自分をみることが

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TomoPoetry、後ろには光と闇と、ふりかえるな。

TomoPoetry、後ろには光と闇と、ふりかえるな。

ふりかえるな
きみは何処から語っているのだろう

凍った黒い歩道
こおりこなごなに降りくる黒い宇宙
わたしの出発地はわからない
ぶくぶく
呼吸音が聞こえない海底
砂浜をかけのぼり
コンクリートの箱に入り
やわらかい手指や
みどりの蔓に抱かれて
今 木箱にいる
冷めきったケンタッキーのような
黴が覆う名もない立方体のような
存在

廃棄してもいい
砕いてもいい
火をつけてもいい
向こうから駆けてくる

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TomoPoetry、石をつみあげよう。

TomoPoetry、石をつみあげよう。

三千万名を箱に入れて
そのまま忘れてしまった
映画のなかで恋をした後
夕食は釘の味がするだろうか
過去がならぶ
ダイニングテーブルクロスは赤い
痔が耐えられないので
歴史の椅子がカタカタ鳴っている
あなたの痔のいたみと
三千万の
いたみと
どうちがうのか
地殻がパラパラとはがれ落ちる

あなたはわたしの背に爪たてながらいう
いたみはフォークとブロッコリ
ならんで凍えていく

あのいたみをおぼえてい

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TomoPoetry、風や言葉そして重さが断ちきるもの

TomoPoetry、風や言葉そして重さが断ちきるもの

あおい海に手足を伸ばした海月
きみは月にかたどられている
砂漠で吹かれる文字 
ひとびとが去ったテント
言葉が響くことのない銀河系

手あるいは足に
純白の
うすい歴史がおとされる

赦されるには血が流されなければならない

きみから血はながれない
きみからながれるのは
音のないシンフォニー
彫ることができない記憶
たくさんの
カラフルの
時間がこぼれたのに
床はかわいている

きみが歩くことがで

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TomoPoetry、いちご大福

TomoPoetry、いちご大福

いちご大福が好きだ
連れ合いも、友人も、親戚も、初恋のひとも
ヒットラーも、岸信介も、サンドウィッチマンも、
食べる時は孤独の壁に囲まれる
甘さに
斜めになる口を隠すために

きみは口に押し込む
いちごときみの忘却と
銀行通帳に並ぶ
数値のために
わたしの身体のためだと
しろい骨と
ブルーの海底が
モーニングテーブルにならぶ

まっしろい球体を切ると
なかには
きみのたいせつな記憶のような
真っ赤

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