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TomoPoetry、ひと月を捻ってしまう。


きみの外でも内でも
暮れていくものがある
青空に描かれた良識が
湿りはじめる 
シベリアのキャベツのように
フイルムがカラカラ鳴りはじめた
深夜降りつもるカラスの羽のように
歩道はしずかだ

ケンタッキー人形のように
国家はコンコン響かない
牛丼に添えられる紅生姜のように
社会は口にはこばない
柱が傾きゆく家
信念がすきとおりゆく時代
きみとわたしの影は
ゆるやかに色を変え
カレンダーの頁の
パステルボックスのゆるやかな変化で
色をうしない
そしてねじられると
神田川に浮かぶ

まだひと月が残っている
晴れ着とクリスマスキャロルと
なにも書いてない純白の
時間の裏

きみはすぎゆく時間を両手で握りしめる
死に触れただろうか
あたらしく生まれる
ガンジス川の水源に触れただろうか
きみの手のひらは
割れたばかりの青いガラスの透明度

透きとおった意味になったきみは
ひと月よりたいせつなものを握っている

まもなく
星も
生命をまったく含まない新宿のわたしも
真っ白いシートでつつまれる
星が見えない星座図
きみは見えるだろうか

そのとききみは
凍った空に溶けているわたしを見て
生きていく決心をするだろう

きみを殺すのはきみを愛撫する手
きみを裸にするのはきみを解体する眼
きみを消してしまうのは
きみにキスした記憶
そのとき きみはきみだけの時間にいる

きみは真黒な魂
そこは裏返した地表
足音は響かない
ゼラチンの空気
すべての生がカラフルにポーズを作っている
きみが歩くと
ポロポロと老いた星の表皮がめくれる
なかには
見ることがないきみが眠っている

消えてしまったひと月の
大都市の地図のうえを
きみが駆けてくる
なにかを運ぶために
生鮭一切れ
数の子一皿
きみの生を盛りつけた
モンブラン一個
そして きみ

地上ではすべてが売られ
すべてが食べられ捨てられる
食べたひとは知らない
なにを食べたか
きみの絶望と
白紙のまま残されたきみの希望

消えてしまった時間がながれる都市の
裏側を
命が駆けてくる
影のまま
しずかに一瞬で

きみは哀しみと死を食べる
わたしと
ならんで
与えられた
限られた永遠のあいまに
わたしたちの
スルメイカのような未来
言葉を洗いながした豆腐
鍋に箸を伸ばし
ひとつひとつ確認しながら
噛む

時間の空白のかるさと重さ
そのあいだに煮詰められた
意味をなさないものを
名を思い出しながら
モゴモゴと
噛みしめる

きみは言う
あなたの味がする
そして 添え皿に
そっと出す



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