TomoPoetry、朝の鬼、まだ早いのに。
鬼は
現在そのままのように
過去に書きとめられているように
歴史が語るように
あかい眼で睨んでいる
わたしを
わたしと出あわせたなにかを
言葉にしようとするわたしを
憎み たぶん
恨み たぶん
鬼は知っているのだろうか
どうしてわたしと出あうことになったのか
わたしは鬼になにをしたかおぼえていない
鬼よ わたしはきみが好きだ
きみはなにを怒っているのか
おしえてくれ
頭のうえに地球儀 それとも
熟れた桃
だれかの手が
すべてをふたつに分ける
あおい地球を
ピンクの桃を
炭酸カルシウムのわたしを
夜明けまえの空に
あなたの指がいくつも筋をつくる
ねぇ このまま寝かせてほしい
できたら
このまま
この世界から摘みあげてほしい
らっきょう
大蒜のシソ漬け
死者の
なんにもないという空白の美しさ
わたしにはまだ
重さが残っている
しろい
新潟産のご飯にならべる
生きているものをいくつか
死んだものを
いっしょに箸ははさむ
今日はどうするの?
鬼よ
まだ
地球も
宇宙も
なにも認識していないよ
わたしも
まだ早いのに
ようやく大蒜がわたしの神経を
絡めからめながら
語っている
わたしは
この
地のいちぶなんだって
もう行くよ
どこへか わからない
あなたの真っ赤な眼が
憎しみなのか
愛なのか
わからないように
鬼よ
まだ 早いよ
どこへ生きるか決めるのも
ここで死んでいいか決めるのも
でも
わたしは
どちらでもいい
つめたい風は
宇宙をひやしていくよ きみを
わたしを きみの憎しみを
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