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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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2020年9月の記事一覧

TomoPoetry、くらい時に。

TomoPoetry、くらい時に。

時がくらい
帯がくらい
あなたのからだを通る時間の管がくらい
そんなことに気づく夜
あなたの欲望はこなごなに消える
顔の傷は平行に
砂時計の目盛りよりすこし斜めに

笑う
語る
泣く
黙る
暗闇で蛍光色の傷
裂けると銀河系が見える

あなたは帯を外しながら
小舟に横たわり
真っ暗な海に出発する

目的地はどこ
知らないあなたは
星をかぞえる
欲望によって星は赤い
だれかの死によってきみの手は赤い

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TomoPoetry、秋にふる。

TomoPoetry、秋にふる。

秋にふる
かなしみと諦めと死 そして
あたたかい雨
呆れるほど長く停滞する前線
人生の
歴史の
あなたの
爪先は徐々に泥の斑点になる
わたしたちの歴史は
蛇の斑点
星空の斑点 そして
斬られた背をかくす半纏

今世紀はとても濡れた
崩れる地図のうえを
透き通った空がながれる
家がない
あなたは秋になりゆく空をながれるものを見る
短い誇り
焼かれるスーツ
千切られる詔書
あんなものを纏うのではなかっ

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TomoPoetry、水晶の頰。

TomoPoetry、水晶の頰。

それは空から切り出された
生きてはいない
金属音と槌音
あかい記憶とあおい想像に
あなたは言葉の鑿を当てる
どこかに意味の臍がある
水着の隙間で
紙魚に潰されて
祈祷のあいまの沈黙に
生まれる価値と
死にゆく道がある

あふれ出てくる緑の芽
踏み砕かれる眼
誰が通りすぎるのか
足音 あるいは
サッカーボールが描く円弧
料理が焦げついている
箸の脚
棺の身体
炭鋏の腕
中華鍋に顔
そこには過去とロコ

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TomoPoetry、レースのドレスで。

TomoPoetry、レースのドレスで。

死はたがいに手をつなぎながら
ひとつの風になり
ひとつの泡立つ流れになり
地を覆い
沁みていった 
窓はすべて閉じネズミたちは神聖文字を削り
遺跡が完成する朝

ウェディグドレスをまとった死
暗闇での人生をクラリネットで語る死
ストロベリータルトを抱いた死
全身を桜色の絨毯で巻かれた死
砂をさらさら落としつずける死
おちてきた空に蒸発する死
見えない死

知らない死の時
眼がひらいていることは確か

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TomoPoetry、よみがえりの歌。

TomoPoetry、よみがえりの歌。

シーツも枕も青い空間を漂う
試験菅のように
光が乱反射している
もがくように泳いでいるので
パジャマはビッショリ濡れ
二時間ごとに着替える
蛭をライターの炎で落としながら
ジャングルを通って仕事に行く夢
時に ドアの音でジャングルの緑は消えるが
暑さはとぎれない

身体が炎にある時
魂はベッドサイドにすわっていた
真赤に熱をおびている空 鳥は飛ばない
幼稚園の色紙細工のようにはがれおちる空
鳥にな

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TomoPoetry、魂のはばたく音。

TomoPoetry、魂のはばたく音。

魂が冷えると行き場をなくした熱が空に集まる
鳥は木蔭にはいり
人はそろってカーテンを閉じる
上昇する音がひびく
魂の輪郭がふるえる音
暑さのなかで
飢え
砲撃
暴行
殺人が行われる
列をなし
肩を組んで
人はみんなで納得できる旗を掲げる

きみは誰も知らないきみの歌をうたえ
誰も聞かない隠れ伝わってきた新しい歌をうたえ

超音速の紙飛行機が飛ぶ
ざわざわと雲とカーテンがゆれる
暑い記憶と侵入してき

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TomoPoetry、目的地。

TomoPoetry、目的地。

きみは出発する
わからない目的地を目指して
何年かかるか
たどり着けるかわからないが
ひとこと、出発せよとの言葉を聞いた
浅草の路地を雨を避けて歩き
走って信号を渡ると
アフリカの砂が
サラサラ足下を流れていた

しばらくすると告げられる
行き先は
きみは知らなくて良い
その都度指示する

なんのために
きみは問うが、答えはない
どうして従う義務があるのか
それも意味はない
浅草の交差点を渡ると

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TomoPoetry、おくる。

TomoPoetry、おくる。

おくる
二十代に雨が降りつずけて
地を流すように母をおくった
四十代にまるく暗くなった石のような
父をおくった
空っぽの庭から
夥しい貝がでてきた
泡で庭を覆うまで
詫びを氷水で冷やし
スーパーから買ってきた固い肉饅
蒸したらよいのだろうが
重く手に持てず
わたしのこころの奥底にするりとはいり
わたしが手にした何よりも重くなる
母の何も語らない眼
地中海の底に沈みゆく
父の震えない喉を
昼間の星が

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TomoPoetry、わたしの影

TomoPoetry、わたしの影

朝陽にはるかまでひっぱってのばされ
手が天竺にとどくところで
影は生きることをやめる
裂けた電信柱や
頭の欠けた塔や
腐敗した組織
そして自分の影を見ることがない
金属の枠でできた誇り

どのような思想であろうとも
影を忘れていては
死にゆく肉体にかけることばを持たない
自分が死にゆく時の姿勢を想像できない

一日を始める
のびた影はゴミを集め
あいさつを数回するが身体は曲がらない
数十年の悪夢

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