TomoPoetry、秋にふる。
秋にふる
かなしみと諦めと死 そして
あたたかい雨
呆れるほど長く停滞する前線
人生の
歴史の
あなたの
爪先は徐々に泥の斑点になる
わたしたちの歴史は
蛇の斑点
星空の斑点 そして
斬られた背をかくす半纏
今世紀はとても濡れた
崩れる地図のうえを
透き通った空がながれる
家がない
あなたは秋になりゆく空をながれるものを見る
短い誇り
焼かれるスーツ
千切られる詔書
あんなものを纏うのではなかった
きみは裸で
濡れる
ひとに
軽蔑されるような雨
精密な計画を消す
朝のアイスクリーム
一度入ると
半世紀出れない青
誰が誰かわからない青
あなたの現在が
透きとおりつつある
わたしが割るのは宇宙をのせる花瓶
しかし 花瓶はいつもひとりでに割れる
もう夏や春はやって来ないか
眼鏡と傘
蜜柑と革命
あなたは身体の削れるところをさがす
レインシューズが胸を蹴る
スニーカーが太陽系を
踏みつける
プロレタリアートの漏斗
あなたの杏仁
そのうえにコーンフレーク
わたしたちは生き続けるだろう
秋雨が
骨を洗う
ときどき舌で
世界を舐める
甘いマカデミアナッツ
二人三脚の消えた脚は
違うところで
違う濡れ方をしている
あなたはカシミアのセーターを編む
一生くすぐったい諧謔を編みこんで
傘をまわしながら
あまりの生を生きる
雨にうたれ
リズムと遠い声で
残りの人生を染めながら
あなたは濡れている
生まれてから
そろそろ
凍って坂をくだり
砕かれるころだ
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