TomoPoetry、目的地。
きみは出発する
わからない目的地を目指して
何年かかるか
たどり着けるかわからないが
ひとこと、出発せよとの言葉を聞いた
浅草の路地を雨を避けて歩き
走って信号を渡ると
アフリカの砂が
サラサラ足下を流れていた
しばらくすると告げられる
行き先は
きみは知らなくて良い
その都度指示する
なんのために
きみは問うが、答えはない
どうして従う義務があるのか
それも意味はない
浅草の交差点を渡ると
サハラ砂漠にいた
時にあることだ
地下鉄から階段を駆け昇り
呼ばれて振り返ると銀河系の反対側の星
そこから出口へ飛び出しても
黄色の花に覆われた星
まず歩きだす
進むしかない
砂に育つ花畑を
乾き死んだトカゲをまたぎ
水が湧き出した泉で咽喉をうるおす
頭の上も足もとも砕けた星
歴史をくぐった魂の残りが
漂っている
多くのひとが
出発せよと聞いても
動かなかった
動く意味を感じないからだ
きみはどうして動いた
死んだ蛇が尋ねる
わからない
ランボーは語った
「充分に見た。幻はどんな空のもとにも出現した。
充分に得た。都会のざわめきを、夕べに、日の照る間に、そしていつでも。
充分に知った。生のさまざまな停泊を。-おお、ざわめきと幻よ!
新しい愛情と物音に包まれての、出発だ!」
何処に向かって
だれの孤独と出会うために
それは知る必要がない
わたしは出発せよと鳴り響く声を聞いた
生まれてはじめて命じられた
出発は
最初から愁いと悲しみを握りしめていた
それらを
どこに埋めようか
蛇が埋めた愁いが爪先にかたく響いた
もう一度反響する
歴史で一度だけ形をもった言葉の塔
足音や呼吸
わたしたちの生きる時間を
メロディにする
目的地は要らない
理由も不要だ
わたしたちが生まれて来たように
声として生まれ
声のままに歩み
声のゆるしで
旅を終える
そのはずだ
もんじゃ焼とイタリアンそして武器を奪われ
焼かれるエスカルゴ
生きているものはない
映画とファッションビルそして
裸で乾いていく欲望
充分に
見た
得た
知った
だから、出発するのだ
もうすぐ次の声が聞えるだろう
コンクリートの幻の街をふるわせて
きみが生まれたのは
人類の砂漠の道
そこにきみの声の
塔を小さく残すのだ
大腿骨の記憶の高さの
そこから先は
人類が残した文字が反響している世界
眩暈をおこすことはない
新しいきみの世界だ
生きているか死んでいるか
きみは気にしない
気になるのは
脚に触れる金属の花びら
その止むことがない和音
もうきみはあの声を聞くことはない
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