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新型コロナウイルスを季節性インフルエンザ、SARSと比較して考える

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COVID-19と季節性インフルエンザのような毎年流行する感染症との違い

 季節性インフルエンザは、高熱や鼻汁、のどの痛み、関節痛など、割としっかりした症状が目に見えて現れます。 しかも、感染したのち短期間で症状が出ることが多く、広がりが見えやすい。 また、検査をしなくても、周囲の流行状況や典型的な症状を見て医師が診察すれば、「これはインフルエンザだ」と判断しやすいので、個人の判断あるいは医師の判断により早期に隔離状態を取れるため、ある程度感染の広がりを抑えられます。

 ところが、COVID-19は、なかなかそういうわけにはいきません。 症状がごく軽かったり、ほとんど症状がなかったりする人が一定数いて、そういう軽い症状を持つ人が大勢に感染させてしまう例があります。 また、感染してから症状が出るまでに時間がかかる例があるのも厄介です。

 例えば、2009年に流行した新型インフルエンザ(H1N1型インフルエンザ;現在は季節性インフルエンザの一種として扱われている)は、ある人が発症して他の人に感染させてその人が発症するまで1日から数日以内ですが、COVID-19は約4~8日とされ、インフルエンザよりも長めです。

 だから、「どこで感染が起こったか」が追いにくくなってしまうのです。 しかも、症状が出る前から他の人への感染力があります。 そのため、感染者は症状が出るまでの間に色々なところに遊びに出かけたり、旅行に行ったりする可能性があります。 結局、「コミュニティが散った後に発症する」というのが、非常に厄介な点ではないかと思います。 こうした観点から、インフルエンザは「面で広がる」、COVID-19は「点で広がる」と説明されることもあります。 そこで、点から感染の場となった場所や状況(クラスター)を探し当てるのに、積極的疫学調査を通しての「クラスター対策」が有効である、と言えます。

COVID-19とSARS(重症急性呼吸器症候群)の違い

 SARSと異なる点は大きく2つあります。

 まず、SARSは、感染した人の大部分が重症化し、重い肺炎を起こします。 すると、そういう重症者をしっかり隔離してしまえば、感染の広がりを抑えられます。 しかも、ほとんどの症状が重篤なので、感染者も特定しやすく「どこで感染したか」も調べやすい。 ところが、先ほど説明した通りCOVID-19は軽症や無症状の例が比較的多い。 つまり、ステルス戦闘機のように気が付けばウイルスに包囲されているという状況になりかねないのです。 感染した人全員を特定して隔離する、ということ自体がそもそも難しいのです。

 また、SARSの原因となったウイルス(これもコロナウイルスの一種)は主に下気道(肺)で増えるのに対して、新型コロナウイルスは「上気道(のど)でも下気道(肺)でも増える」という違いがあります。

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(東北大学押谷仁教授提供情報)

 そのため、SARSは病院で人工呼吸器につなぐ前に挿管(気管にチューブを入れる)したり、痰の吸引などをしたりする際に、特に感染リスクが高まります。 直接肺からの粘液に触れたり、そこに含まれるウイルス(エアロゾル)を吸い込んだりするからです。

 一方、新型コロナウイルスは上気道(のど)でも増えるため、大声で話したり、歌ったりといった行為だけでも周りの人に感染させてしまいます。その上、下気道でも増えるから、肺炎といった重症化にもつながってしまう。 重症化を引き起こす上に、軽症例でも感染力が強い、これがCOVID-19の特徴と言えます。

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