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ぼくのPoetry gallery

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かつて野に棲んだ詩鬼の残骸をここに記すという悪い趣味です。
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#詩の展示

詩134「二人の男」

「二人の男」

まだ俺は俺自身ではない
灰皿に煙草を押し付けて喫茶店を出るように
この場を変えることすら出来ていないままだった
理想の檻の中から出られないまま
鬱屈した日々を飴玉のようにしゃぶっている

ある男は
不屈の信念で自分であることを味わって
日々を繋ぐ燻された銀の姿で煩悩を翻弄する
その指先でしがらみを解き放つ旅人
その根とあの音を編み合わせて
食いつなぐための鎧を紡ぐ
明日を追う本望

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かつての詩133「HX」

かつての詩133「HX」

「HX」

515,280分目は夜だ
色鮮やかなイルミネーションを目の当たりにしながら
繁華な街を歩いてみれば
半端な気分でモミの木が欲しくなったりする
だけど僕の部屋には置く場所がなくて
飾りを付けてキャンドルも灯してみたいけど
僕の部屋には派手すぎる

358日目の夜には
コバルトブルーの夜空に星が流れたらいいな
薫らぬ寒さが吹き止んで
涙のように星がひとすじ
雪でも降り出してくれたらどうだろ

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詩132「循環と場面」

「循環と場面」

私はひどく疲れていた
昨夜はぐっすり眠れたというのに
精神はすっかり削ぎ落され
むき出しの心臓がじくじく疼くようだ
横たわる身体から手を伸ばすと
一冊の本を掴んだ
毎晩のように読んでいる本は
いつもいつも
世界が限られていることを知らせる
今宵も指はこの本を開く――

――私はひどく憑かれていた
昨夜はぐっすり眠れたというのに
精神はすっかり削ぎ落されて
むき出しの心臓がじくじく

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