マガジンのカバー画像

ぼくのPoetry gallery

164
かつて野に棲んだ詩鬼の残骸をここに記すという悪い趣味です。
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

詩153「旅人は待てよ」

「旅人は待てよ」

帰らぬ旅人が帰ってきた
消え失せんと望むはうつつ
記された足跡は永遠となって
誰かが望めば
赤い詩集の果てから帰ってくる
むしろ難しいことなどなくて
場所も時間も選ぶこともなくて
瑠璃色を纏った言葉が手紙となって
我々のもとに戻ってくる
理屈などはどうでも良いと思えた時には
あのレインコートを羽織った旅人が見える
失われた時を知る豊穣の女神は歌い
この宝石を南の風で濡らすことだ

もっとみる

詩152「メテオの邂逅」

「メテオの邂逅」

その契りは真夜中に起こる
創作の神と偽って飛来する酩酊のメテオ
言葉には三神が宿るというが
踊る文字はさながら呪文か魔法陣と化し
たちまち言葉が熱を帯びて送り出す
有無を言わせぬ契約は創造の深みへと魂を突き落として
それを灼熱の温度まで高めてしまうだろう
今まさに月に冴える深夜の創作は疾走した
まだ見ぬ失われた創造性を探し出すかのような快感こそが
我々を陥れようと目論む牧神かサ

もっとみる