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ぼくのPoetry gallery

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かつて野に棲んだ詩鬼の残骸をここに記すという悪い趣味です。
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2023年11月の記事一覧

詩144「階段」

「階段」

階段の一番下の段に腰掛けて
八雲の『怪談』を一話読むごとに上がってみた
はて、随分と読み進めたが踊り場に差し掛からない
本から目を離してみようとすれば
寝床で目覚める夏の冷や汗

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩143「檸檬」

「檸檬」

爽やかな酸味を欲する酷い暑さの日だ
涼を求めて書店へと駆け込んでみた
かつて梶井は書店に檸檬を置いたが
今や書店は梶井の『檸檬』を置いている
弾けた『檸檬』に青葉茂る桜の樹の下で何想うか

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023