2023年のCEOの優先事項:人材に関する3つの重要なトレンドとは
1.最新の大規模調査が示す自社のリーダーの質に対する自信の欠如
私たちは20年以上にわたり、世界的なリーダーシップ調査「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト」を実施してきました。その中で、ここ10年以上、リーダーの質についての調査が行われてきましたが、最新の調査によると、初めて、「自社のリーダーの質」に対するリーダーの評価が大きく低下したことが判明しました。
このことから、CEOは2023年に優先事項を変更する必要があることが示唆されています。
自社のリーダーの質が高いと回答したリーダーはわずか40%で、2年前に比べて20%近くも低下しています。これは、2007年から2008年にかけての経済危機後の数値とほぼ同じです。
この低下は、成長の鈍化に対するリーダーの懸念と、自社が直面している課題にうまく対処できていないという自信の欠如を反映しています。そして、経営幹部は、このネガティブな傾向が従業員に悪影響を及ぼしかねないことを認識しています。
CEO は、自社が直面するさまざまな課題の中で、目標達成と今後の課題解決に必要な人材を確保できないことが最大のリスクであると考えています。実際、CEOの懸念事項のトップに挙げられたのは、59%のCEOが選んだ「人材の定着」です。
CEO は、急速に変化するビジネス環境の中で組織が競争に打ち勝つために、人材の定着が重要な優先課題であることを認識しています。これを怠ると、組織の優先事項を実行するために必要な人材が不足し、潜在的な景気後退の中で、組織はさらなるリスクにさらされる可能性があります。
私たちは、グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト調査を実施して20年以上になりますが、このことは、今後3年間における最も重要な経営課題が、CEOとCHROの両者で初めて一致したことを意味しています。その共通の経営課題が、「優れた人材の定着」です。
最新の調査、グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2023によると、54%の組織が、昨年、離職率が上昇したと回答しています。このため、人材の定着は、CEOやCHROにとって、成功を収めるために他のあらゆる課題に先んじて対処しなければならない深刻な課題となっています。
このことはあらゆるリーダーにとって、他に類を見ない困難な時期かもしれませんが、私たちのデータから、リーダーが従業員の信頼を取り戻し、人材の定着を促進するための3つの方法が導き出されました。
2.リーダーシップ・パイプラインを強化する
重要な役割を担うリーダーを充足するために、確固たるリーダーシップ・パイプラインの構築を優先課題として取り組んでいる組織は、離職率の上昇を抑え、優れた人材の定着を促進する可能性が高くなります。
過去10年間のグローバル・リーダーシップ・フォーキャストの調査結果から、最も懸念される傾向の一つに、重要な役割を担うリーダーの不足が示されています。最新の調査において、重要な役割を担うリーダーの供給体制があると回答した組織は、わずか12%でした。
これは、業績上位の組織が真摯に取り組んでいることです。十分な供給体制を整える努力することにより、競合他社が苦戦していたとしても、より成功を収めることができます。特に、確固たる人材の供給体制を有する組織は、そうでない組織に比べて、優れた人材を獲得し定着させる能力が6倍、従業員の燃え尽きを防ぐ能力が5倍、業績上位の組織になる確率が3倍高いことが判明しています。
このような組織の人事役員は、将来の人材ニーズを鑑み、積極的にリーダーを育成し、ハイポテンシャル・リーダーには、キャリアアップと成長の機会を提供しています。その結果、これらの組織のリーダーは、自社のリーダーの質に対して、より大きな自信をもっています。優れた人材の供給体制のある組織では、同業他社と比較して、組織全体のリーダーの質を10倍高く評価しています。
3.信頼の文化を醸成する
自社のリーダーに対する自信を大きく低下させている要因の一つは、信頼の低下です。グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2023では、特に経営幹部が、チームとの信頼関係を築き、維持することに苦労していることが示されています。
自分の上司が正しいことを行っていると信頼しているリーダーは46%にすぎませんでした。さらに悪いことに、自社の経営幹部を信頼していると回答したリーダーは、わずか32%でした。
この結果は、エデルマン社の最新の信頼指数の調査結果と一致しており、リーダーに対する信頼は急落しているものの、事業部門のリーダーに対する信頼は依然として他よりも高いことが示されています。
このような信頼の欠如は、信頼を失うだけでなく、生産性、成長、イノベーションを阻害するリスクとなります。リーダーが信頼を築けなければ、従業員は、生産性を上げ、職場で最適なアイデアを創出する可能性が低くなります。
CEOや経営幹部は、従業員との信頼関係を築き、信頼を回復するために、より一層の努力が必要です。そうすることで、従業員を惹きつけ、育成するために尽力している人材を、より定着させることができます。
4. 目的意識をもって人を率いることを支援する
組織が目的を広く浸透させるための最善の努力をしているにもかかわらず、職場で目的を見出している上級管理職、および初級・中級管理職は、半数以下です。最高経営幹部でさえ、自分の仕事に意義や目的を感じている人は3分の2以下となっています。これは、事実上、全階層においてエンゲージメントの低下を招くだけでなく、ハイポテンシャル人材がリーダーとしての役割を果たそうとする意欲を喪失させるものです。
リーダーが強い目的意識をもっている場合、そうでないリーダーに比べ、自身の役割に従事していると感じる確率が9倍高く、組織に留まる確率が2.4倍高くなります。
さらに、リーダーが自身のキャリアパスを理解している場合、そうでないリーダーに比べて、仕事に意義と目的を見出している確率が4倍も高くなります。信頼と目的意識を築くための効果的な人材戦略を実施することで、リーダーは従業員の期待に応え、自身の役割に積極的に従事する優れた人材を作ることができ、その結果として、ビジネス目標を達成することができるようになります。
5.優れたリーダーシップが成功の鍵を握る
リーダーとしての役割を果たすそうとする人が日増しに少なくなっていることが懸念されています。
CEOや人事責任者は、自社のリーダーが最高のパフォーマンスを発揮し、その過程で成功できるような組織文化を醸成することが重要です。
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