見出し画像

第5章<成長する>挫折しつつあるリーダーを支援するコーチ

1.エグゼクティブ・コーチのアクション

スコットは工場長として、規律のとれた組織管理をしていたが、彼の優しい性格が、海軍で学んだ厳しい指揮管理系統を和らげていた。この組み合わせは工場の同僚たちにとっては非常に効果的だった。しかし、品質保証の責任者に昇格すると、彼の親しみやすくはあるものの支配的なやり方が障害となった。新しい職務での成功は、組織上の権限よりも彼の説得力と影響力にかかるようになった。スコットは、自分のやり方を変えなければならないことを認識できなかった。

🔶🔶🔶第5章記事の一覧はこちら!🔶🔶🔶


エグゼクティブ・コーチが、スコットの社内関係者と面談を行った。彼らは、品質改善方法を話し合うときのスコットは、相談しやすいというよりも支配的すぎると感じていた。

コーチの面談と真剣な振り返りを何度か繰り返した後、スコットは問題を認識し、自分の解決策を推し進める前に、他者の情報を求めるようにした。これにより、品質改善について当事者意識を共有しているという感覚が関係者たちの間に強まり、その結果、品質面でも協調の面でも大きな改善が見られた。

阻害となるような行動が引き起こされそうなときを予測する。まず大事なのは、職務が変わる時には阻害のリスクが増すと認識することだ。しかし阻害行動の引き金になる要因は他にもある。それは人によって違うが、誰もが自分の引き金を意識していけるわけではない。環境、体調、疲労、批判、気分、態度、価値観や感性を侮辱するもの、人前に出ることやリソースの取り合いにつながるようなビジネス上の出来事、人とのやりとりなど、引き金には、こういったさまざまな変数が含まれる。これらは感情的反応(いらだち、怒り、焦燥など)の原因となり、不意で予想外であればあるほど、阻害行動を引き起こしがちになる。

2.自分の引き金を特定する

・私は______________ときに怒りを覚える。
・私は______________ときが嫌だ。
・私は______________にうんざりしている。
・私は______________をするのは失礼だと思う。
・私は______________人が するのを望む。
・私は、人が________するのをやめれば職場はもっと良い場所になると思う。
・人が______________してさえくれればよいのだが。
・私は仕事の中で、______________ときにいらいらする。

自身の阻害要因を探って向き合うことで、リーダーはその引き金が引かれそうな状況を予測することができる。その結果、代替となる行動や、阻害要因に対処する行動を生み出すことができるのだ。

阻害となる行動が起きたときの代替となるアプローチを実践する。リーダーが自分の阻害要因と、それがいつ起こりそうかを理解したら、次に阻害的な行動を生産的な行動に置き換えなければならない。そのためには練習と、本章で先述したようにコミットメントが必要だ。違う行動がより良い結果を生むことが分かれば、あとはそれを実践するまでである。

あるテクノロジー会社の経営幹部の例を考えてみよう。論争的な彼は、懐疑的で神経質で防御的で、ときには被害妄想的だとまで見られていた。彼は自分の利益を守ることに固執し、フィードバックに抵抗しているとよく非難されていた。一緒に働く人を疲弊させ、たとえ彼が正しくても、最終的には信用を失ってしまっていた。彼にフィードバックするのは困難だったが、周囲はついに、別の行動を実践すればパフォーマンスに大きな違いが現れると説得した。

このリーダーに有用だったのは、例えば、部下の「悪いアイデア」(彼に言わせれば)を再考する際に、別の質問方法を練習し、そのアプローチが相手にどのように認知されるかを探ることだった。次に、コーチと非公式にそのアプローチのリハーサルをしてから、実際の場で試した。実際の場では、コーチは同席せず、リーダーが自分の信頼する同僚からフィードバックを得た。そしてフィードバックを利用して、どうしたらもっと良かったかを振り返り、別のより良いアプローチを計画した。これにより、彼は論争的という阻害要因をうまく管理できるようになったばかりか、同僚もそんな彼の努力に気づくようになった。彼らは、組織文化に良い影響を与えているとしてリーダーを称えるまでになった。それでもまだ、完璧からはほど遠い。論争的という阻害要因は常につきまとうだろうし、これからもそれが好ましくない行動につながることもあるだろう。だが、行動を大きく改善し、それが認められて評価されたのだ。

新しい行動を続けることに焦点を置く。阻害行動の管理は、健康の維持や食習慣の改善同様、一生続けるものだ。常に気をつけていないと、簡単に以前の行動に戻ってしまう。焦点、モチベーション、自覚、そして通常は他者からの支援が必要である。成功を確認し続けるシステムが重要なのだ。良い行動に焦点を当てることには大きな効果がある。良い行動に関するフィードバックを受けるほうが、阻害要因に関するフィードバックを受けるよりもはるかに楽である。また、同僚によるフィードバックに頼れば、彼らも支援しようという気になり、阻害要因が現れたときも、より寛容に対処してくれるようになる。

多くのリーダーは、行動を自分でも確認している。ある財務担当幹部は、他者からの情報を得るために自由回答形式の質問をするたびに、手帳にチェックマークをつけている。支配的にならないよう注意しているのだ。また、あるリーダーは、会議での合意点をすぐに要約するようチームのメンバーに依頼することを習慣にしている。彼女は、あまりに熱心すぎて、チームに明確な指示を与えるのを阻害しているというフィードバックを受けていたのだ。阻害要因を管理するにあたって、進捗状況を追跡する方法は、複雑である必要も難しくする必要もないが、ずっと継続されるものでなければならない。

3.促進要因を最大限に活用する

経営幹部の失敗の原因となる阻害要因がある一方、良い行動を引き起こす促進的な性格もある。人材開発の加速化の観点から言って、リーダーが自分の最善の部分を引き出し、ビジネスに好ましい影響を与えられるように取り組むのが理想的だ。例えば、もともと変化を受け入れやすい性格の学習者は、同等に優秀だが慎重で現実的な同僚と比べ、組織の再編の際に革新的なアイデアを出すのが早いだろう。気持ちの立ち直りが早い人は、心配症で自分の判断を後悔しがちな人と比べて、ストレスが多く暖昧な課題に取り組んでいるときでも、エネルギーを注ぐべきところに注げるだろう。促進要因を意識することで、学習者は自分の強みを活用し、行動ベースのコンピテンシーのフィードバックを理解しやすくなる。

4.リーダーシップへのモチベーション

学習者のモチベーションを刺激することは、人材開発の加速化プロセスにエネルギーを注入し、リーダーを高い階層の職務に適合させるために、最も重要な点のひとつだ。この点は基本的すぎて当たり前に感じられるかもしれないが、モチベーションの理解は複雑である。リーダーになろうとする理由は人それぞれだが、多くの人、特に向上心の強いハイポテンシャルなリーダーは、自分の核となるモチベーションを完全には表には出さない(ときには偽って伝える)。人材開発の加速化システムの中で最初にやるべきなのは、人を率いたいという個人のモチベーションを完全に理解すること(そしてできればそれに影響を与えること)であり、その後で、より詳細なリーダーシップへのモチベーションを探って成長の加速に役立てると良い。

5.おすすめ人材アセスメントソリューション

6.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

7.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?