見出し画像

第5章<成長する>感情的知性(EQ)

1.インタアクション・スキルはEQの裏の側面

感情的知性(EQ)が認知的知性と等しく重要であるという考え方は、論理的に好ましいばかりでなく、リーダーとしての成長と成功を予測する上で正当であることが証明されている。特にアデル・リンによるEQの定義は人材開発の加速化との関連性が高い。EQを高めるための自己管理行動を開発することが重要だとしているのである。リンは、EQを「自分および自分と他者との関係を管理して、自分の思う通りに生きる能力」と定義している。遠大な志に感じられるかもしれないが、これはEQの核心を突いている。高いスキルと知識を持つ多くのリーダーが、リーダーシップにおいて自分が意図することをうまく実行できない。これは、自分や他者の感情に対するる自分の行動を管理できていないためである。


🔶🔶🔶第5章記事の一覧はこちら!🔶🔶🔶

EQが高い人は、自己認識、社会性、他者への共感力が高い。自分のヒューマンニーズやタスクニーズだけでなく、他者の感情にも敏感である。内省的で、他者に対する自分の行動の影響を認識している。そのため、信用を築き、人間関係を保ち、他者に効果的に影響を与えることができる。

EQが平均的な人は、他者の感情やヒューマンニーズにもともと敏感ではないので、自分や他者に対する洞察は一貫していないかもしれない。注意はしていても、ときに自分や他者の行動が示すことを見逃す。リンが指摘するように、このような人は、他者のニーズをもっと理解する術を身につけて、それに沿って行動できるようになると良いだろう。

EQが極端に低い人は、対人関係において鈍感である、思いやりがない、他者とのやりとりや人間関係の構築に盲点を持っていると評されることが多い。他者の重要な感情のサインやニーズに気づかず、関係を壊してしまう。本人にそのつもりがなくても、相手は、評価されていない、認識されていない、ひそかに攻撃されていると感じる。EQを高める努力がないと、周囲は次第にその人の意図に疑問を持つようになり、他者の感情に対する気遣いが本当にないリーダーだと考えるようになる。このためEQが極端に低いリーダーが影響力のあるポジションに就くと、組織文化とビジネスに悪影響を及ぼす。

ここまで述べたように、EQの弱点は持って生まれた特性に根差しているものの、これを解決するのは行動である。DDIがインタアクション・スキル(第2章参照)の基本的な価値を確信するようになったのはそのためだ。EQを高めるには、新しい、感情面でより適切な行動を使って訓練する必要があり、インタアクション・スキルはEQの行動基盤である。他者の不安に共感的な言葉で応じること、自分の考えや感情を伝えること、支援を求めること――これらは、EQのレベルを問わず、あらゆるリーダーが学ぶ(練習しながら)ことのできるインタアクション・スキルである。

2.EQの不足問題は行動で解決する

トレーニングで個人特性を変えられると言うつもりはない。いつまで経っても感情のサインを見逃しがちなリーダーもいるだろう。だが、この取り組みを真剣に続けるリーダーは、トレーニングや実践をすることにより、自身の行動(あるいは行動の欠如)がダメージを与えるような状況を認識し、感情に配慮した行動を示せるようになる。

EQの不足の問題は持って生まれた特性に根差しているものの、これを解決するのは行動である。

図5.4:インタアクション・スキルはEQの裏の側面である

新たな行動が元の行動よりも良い結果を生むことがわかると、リーダーは次第に自分の行動が与える影響に敏感になり、EQが高まる(図5.4)。

インタアクション・スキルの訓練により、適切な反応ができるようになるのと同時に、他者の感情をより意識できるようになる。この関係は、あらゆる幹部階層に当てはまる。経営幹部にインタアクション・スキルのコーチングを行う理由のひとつが、EQを高めるためである。

3.リーダーはいかにしてEQを高められるか

懸念に立ち向かう。リーダーが自身や相手の懸念、不安、恐れ(例:相手のスキルや知性に圧倒される、リスクを回避する、慢性的に過小評価されるなど)を正確に認識する。

相手の感情を理解していることを確認する。相手の感情を推測することで、感情に対する理解度を確認する(例:「あなたは、このプロジェクトにずいぶん誇りを持っているようですね」など)。もしそれが正しければ、支援していると受け取られるだろう。もし間違っていたら、相手の感情を明確にして話し合うチャンスとなる。どちらにしても、相手の感情が明確になる。

相手の反応を予測する練習をする。これから起こる状況や、これから伝える意見に対して相手がどう反応するか予測する。「プロジェクトを引き継ぐよう依頼したらスティーブンはどんな反応を示すと思うか?」などだ。通常、人は自分が相手に与える影響に気づかないわけではない。ただ、それについて時間をかけて考えることをしないのだ。相手の反応に思いを巡らせば、その分、洞察が正確になる。

反応する前に考える。相手の意見やメール、行動に反応する前に時間を置く。ほんの数秒の場合もあれば、一晩考えてから反応するべき場合もあるだろう。「正しい言葉は効果的であるだろうが、タイミングの良い沈黙ほど効果的な言葉はない」 (マーク・トウェイン)

相手の反応を確認する。自身の言動に対する反応を積極的に確認する。簡単な質問で、相手に良い影響を与え、彼らへの理解の精度を上げられるだろう。「これについてどう思う?」、「会議でのわたしのコメントについて怒っているか?」など。

自分に関する正確なデータを集める。性格診断や多面(360度)診断などを含むアクセラレーション・センターの結果――できればEQの評価に重点を置いたもの――を考慮しながら、EQの洞察を得る。文書化したコメントが最も有効である。

相手がどう感じているかについて、正確なデータを集める。感情面の、あるいは価値観に基づく結果が特定できる、エンゲージメント週査を活用する。エンゲージメント調査は、信頼、権限委譲、協力といった感情面において、多面(360度)診断に勝っている。一般的にリーダーのEQが良い変化を遂げると、これらの測定結果にもそれが表れる。

感情を共有する。考え、感覚、論拠を、自分が接する人と共有する。それによって信頼感と率直さが育つ。リーダーが自分の感覚を共有すると相手も同じようにする気になるので、信頼を築く上では最も有効な手段である。

信用できるアドバイザーを得る。インタアクション・スキルを熟知している人材に依頼し、これから行われる会話で感情の流れを予想し合ったり、最近のやりとりを見直したりできるようにする。率直で正直な話し合いが繰り返されれば、真の意味での洞察と学習が可能になるだろう。

自分の心に否定的な感情を起こさせる引き金(トリガー)を特定する。自分自身を支配し、意図的な行動の妨げとなるトリガーを特定する(前出の「阻害要因を予測して管理する」を参照)。

アデル・リン(2004)

4.おすすめ人材アセスメントソリューション

5.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

6.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?