第一章 「好きなこと」を仕事にしてます(1)
とんでもない誤解
私は熊本在住で、主に「映画解説者」の肩書で、映画について新聞や雑誌などで書いたりテレビやラジオでお話したりすることをお仕事にしています。ぶっちゃけ、「趣味が高じた」というやつです。また、その中のライティングのスキルを活かして、映画以外の分野で文章を書くこともあります。そのため、「フリーライター」の肩書もあります(最初のうちは便宜上、専らこの肩書を使っていました)。
しかも、どこの会社にも属さないフリーランスとして。そのせいか、よく、
「好きなことだけやって気ままに生活できて、いいよね。」
と言われます。
言葉は悪いけど、はっきり言って、
「アホか?」
と思います。
フリーライターの肩書に関しても、
「定職に就きなさい!」
と説教する人がいます(私の母も最初はそうでした)。お約束の、フリーターとの混同です。ギャグで言う人もいますが、本気で勘違いしている人も意外に多いです。もうここまで来ると、本気で
「こいつアホだ」
と思ってしまいます。問題外です。
確かにメインのお仕事は「趣味の延長」だから、その点については一旦、百歩譲るとしましょう。
「フリーランス」→「フリー=自由」→「気まま」
という発想なんだろうなと思います。恐らく、意味が一番近い日本語である「自由業」も、そんな風に見られることが多いのでしょう。
いい大人なんだし、今はスマホでだって言葉の意味ぐらい調べられる世の中なんだから、ちょっとご自分でいろいろ調べてみたらいいのに。
“自由”と“自分勝手”をはき違えて、「何をするのも俺の自由だ!」と言いながら世間に迷惑をかけている輩もいますが、ある意味そんな連中と同じです。
法的に厳密な違いがあるわけではありませんが、大雑把に区別すると、自由業は「自分の好きな時間や場所で、自分で選んだ仕事を自分の好きなスタイルでやる」、フリーランサーは「企業などには属さず、案件ごとに業務委託契約を結んで仕事をする。そのため、場合によっては納期などの縛りがある」みたいな感じなようです。私の場合は、半々ぐらいでしょうか。委託業務についても、納期にさえ間に合えば…という条件のものが多いので、助かっています。
私の場合
ここまで書いても、まだ完全に誤解は解けてないでしょうから、私の働き方を例にしてもうちょっと詳しくご説明します。
まず、私の場合は「(趣味が高じて得られた)映画に関する知識や研究の成果」と、子供の頃から書くことが好きでいろいろと書いているうちに身に着いた「ライティングのスキル」を評価してくださった方が依頼してくださるお仕事をしているわけです(ただし、映画の好みは偏りがあるし、ライティングに関してはきちんとした勉強はしていませんので、いまだに不安なところはあります)。つまり、「好きなこと」と「得意なこと」をお仕事にしているわけです。
とは言え、仕事は仕事。業務委託のところでも触れたように、文字数も納期も決まっているし、内容についての要望や指定もある。書かなきゃいけないこともあれば、書いちゃいけないこともある。一定のクオリティも求められる。時には忖度も必要。
有り難いことに、監督さんや俳優さんたちにインタビューさせていただくこともありますが、事前に質問の内容を考えて時には事前チェックも受けたり、時間が決まっている場合はその枠内に収める計算も必要。余程のことがない限り、サインなど気軽にもらえる空気ではありません。ヘンな質問をして監督や女優さんを怒らせたらどうしよう?そうなったら、自分だけでなく、依頼したメディアにも迷惑がかかる…。結構、気を遣います。
と言うように、あくまでも「プロの仕事」を求められるわけですから、ブログに好き放題書き綴るのとはわけが違います。いろんな縛りもあるし、自分の仕事に責任も持たなければいけません。
どうです?気ままに生活しているように思えます?いや、これだけではありません。
世間一般のフリーライターの皆さんは、得意ジャンルはもちろんあるでしょうが、いろんな分野の題材を手広くこなしていきます。それで「食っていける」わけです。しかし、私は映画以外のジャンルにはかなり弱いという、絶望的なまでに潰しが効かないタイプのライターです。それでも、全問分野外のお仕事も、依頼を頂けばやります。グルメや観光関係のムック本の編集のお手伝いが一番多かったのですが、思い出すといまだに胃が痛むお仕事がいくつかあります。そのことも書きたいのですが、お仕事の話なのでやめておきます(こういう配慮も必要、ということです)。(主に専門分野外の)“お手伝い”的なお仕事の場合は、その書籍等に私の名前が出ないこともあります。私としてはギャラさえ頂ければその辺はそれほど気にしません。これらの「胃痛もの」のお仕事の時は、気にしないどころかホッとしました。
ね?好きなことだけしてるわけじゃないんです。ただ、幸か不幸か、最近は専門分野外のお仕事の声は以前ほどかからなくなりました。潰しが効かないことがかなり浸透したからでしょうか?
ただし、専門分野外でも割りと得意なお仕事があります。「文字起こし」です。同じインタビューでも、テレビの場合はやり取りをそのまま録画して最終的に番組のディレクターさんなどが放送用にまとめてくれますが、活字媒体の場合はインタビューの内容の要点をまとめ、それを指定の文字数に収めるところまでがお仕事です。それらの作業の取っ掛かりになるのが、インタビューの録音を書き起こす「起こし」なのです。インタビューを数こなすライターさんなら、必ずやらなければならない作業です。この作業が、結構骨が折れるのです。たいていは、そういう風に自分が行なったインタビューの起こしをするわけですが、忙しいライターさんから起こしの作業を頼まれることがあります。自分でやっていないので、何の話なのか、何と言っているのかが分からない時もありますが、事前に先方に確認しておけば大丈夫。これで、映画とは無関係の題材のインタビューを引き受けることがあります。これがなかなか面白くて、ためになることもよくあります。で、どうやら私の起こしの作業はそこそこ速くて丁寧らしいのです(自分では分からないのですが、皆さんそう仰ってくださるので…)。これも、大事な収入源の一つです。
ここまででお分かりいただけたかと思いますが、フリーランスは仕事を選べる分、その数には月によって変動があるので、とにかく数をこなさないと食べていけないというのが最大の特徴でありデメリットでしょう。
(つづく)
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