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鬼とは。 一族に伝わる古(いにしえ)のお話 喰われてるぞ埼玉 Eaten外伝 1

世間では鬼滅の刃というマンガが大流行りしているが、我々には困ったものである。鬼がいたとか噂になり禁所の入り口あたりに若い子たちが写真を撮りに来る事が頻繁になってきた。それだけでなく間違った話が伝わる事である。私の一族は鬼に関わった歴史があるから。 

私の一族には1800年に及ぶ家系の書が存在する。本物かどうかは分からないが。
齢(よわい)97歳になる大叔母に
「これ本物かいな?本物なら天皇家より古いかもしれないよね」
と聞くと
「お前も知ってて聞くのかい。その話は今度にしようねぇ。それよりもテレビのアニメってしょうがないわい。思いつきで事実じゃない事を伝えてしまうからな。」
「ひ孫たちが、しつこく聞いてしょうがないわぁ。お前お話ししてあげておくれ」
「全部言わなくてもいいだろ?大婆ぁちゃん」
「そうだね。お前はお話がうまいから分かるように優しく話してあげておくれ」
「分かった。今から子供たちにお話ししてくるね」
私は母屋を出て親戚の子供たちが集まる客屋へ入っていく。

 「おーい、みんな。何してんだい?」
と声をかけるとすぐにテレビの前から二階から子供たちが集まってくる。総勢5家族の6歳から12歳までの小学生8人。
 コロナウィルス予防のため学校は休みになり、近辺の各自の家から遊びに集まってきている。ここならゲームをしてもテレビを見ても外で遊びまくっても怒られない本家の聖域。
昨日の夕方テレビアニメを見て「鬼ってなんなの?昔、鬼が一緒に住んでいたって聞いたけどそれは外で言っちゃいけないってお母さんに凄く怒られたよ。なんでェ?」と質問されまくった。「まあちょっと待っててな。明日お話ししてあげるから」と子供たちに伝えていた。
大婆ぁちゃんと話してもう教えてあげなという事になりこれからお話だ。
 私が大広間に座ると子供たちは私の周りに囲むように集まってきた。いちばん年下の一年生の女の子があぐらをかいた私の足に上に座って
「おじちゃん、早くお話ししてよ。チューしてあげるからはやくぅ!」と私の頬にカワイイチューをしてくれる。凄く嬉しい。
「じゃあみんな、お話し始めるよ。よく聞いてね」「今からお話しする事は、学校や友達、外の人達には内緒だよ。言っても信じてくれないし嘘だと思われるからね。でもみんなの親戚それからご先祖様達が、ずっと昔から伝えてきたお話で昔本当にあったお話しなんだよ。」
子供達は「分かったぁ!外にはお話ししないよ。僕らは外の人達と少し違うって知ってるから」
「そうか。じゃあ始めようね」
「みんなも分かっているように、うちの一族は少し外と違うよね。外の人は見えないものが見えたり聞こえないものや何もいないはずなのに何かいるのが分かる時があるよね。みんなはどうかな?」
膝にのっている女の子が
「わたしもあるよ。ときどきだけど。遠くから誰かの声が聞こえるの。誰もいないのに。見えないのに木の上にいるものが話しかけてくるよ」
「そうだね。みんなもお父さんもお母さんもおじさんもそうなんだ。うちの一族のある人達はは今は山の奥とか人が来ない土地を他の人が勝手に入って荒らさないようにその土地や木や水を守って管理している。」
「みんなのお母さんお父さんは今は山を守る仕事はしていないね。会社に勤めたりお店をやったりしている。でもときどき山に行って山を守るお手伝いをしてくれているのは知ってるよね」
「知ってるぅ。ときどきいっしょに連れて行ってくれる。子犬とかいてキレイなところで遊ぶの楽しいよ」
と子供たち。
「そうだよねぇ。いいところだよね。キレイで優しい動物もいっしょに遊んでくれるし。」
「今は道路も近くまであるし車で1-2時間で行けるところが多いよね。でも江戸時代やもっと前の時代は車なんてないし道路もなかった。近くに人が住むところもなかった。その頃は侍のお殿様が人の住むところと畑や田んぼそれから住む人達の生活がうまく行くよう面倒を見ていたんだ。でもそれは人が住む周りだけでほとんどの山の中はお殿様も知らなかった。」
「お殿様と家来の侍は昔自分の領地をもっと大きくしたり他のお殿様から守るためにここからあそこまでは自分のところだときめてたんだけど他の国が攻めてきてよく戦ったんだ。自分の土地を領地と呼んでいたね。たくさんの戦争がおきたくさんの人がその戦いで死んでいった。領地と領地の境でお互いに自分の領地を広げるため戦いになった。だけど今と違って領地の境は山の中で普段は人は行った事がない。領地の分捕り合戦でもどこが領地の境だか分からないのに戦争していたんだ。」

「だから誰の土地かはっきりしないところは天皇の土地として侍のお殿様達は自分の領地じゃないと決めていたんだ。天皇は侍より偉かったからね。それでその土地を天皇のためにうちの一族が日本各地に散らばりその土地を守る役目をしてきたんだ。日本という国ができて何百年もたってくるとだんだん天皇の力も弱くなり侍の力が強くなってきた。だからみんなのご先祖様達も一族に沢山の他の人達も仲間に入れて侍達と戦っても負けないような強い軍隊になってきたんだ。」
「えぇ〜、軍隊だったのぼくらのご先祖は?おじちゃんも侍?兵隊なの?」
「そう、戦争が起こったときはみんな兵隊になって土地や家族、時には平地に住んでいる人達を守って戦ったんだ。中には凄く強い侍の軍隊になってお殿様になった人達も多いんだよ」
「そうなんだ〜。強かったんだね。今は侍の時代じゃないから戦争しなくてよかったぁ。」
「鬼の事なんだけど、あれは人がいない山奥で体が大きくて戦うための山専用の鎧をつけたご先祖様達を見て驚いてそう見えた事がよくあったんだって。でも山を守る一族と周りの人達は知ってたから、なんだあの人達かと安心したんだって」
「よかったぁぁ〜間違われないで。でも鬼は赤い顔してたり髪の毛が光っていたりしていたっていうのはなぜ?」
「その鬼は、他の国から来た人達なんだ。昔は日本から外へ行くのもくるのも船だったのは知っているよね。昔の船は木で作られていて大きな波や風で壊れやすかったんだよ。今のロシアから魚をとりにきたり、ヨーロッパからフィリピンに沢山のヨーロッパ人が来ていたりした。それよりもっと昔は今よりも海は狭くて陸や島も多かったんだ。長い間に北極の周りの大きな氷が溶けてだんだん海が広がってしまった。大昔はもっと日本に海を渡るのが簡単だったので渡ってくる人が多かったんだよ。大体今から1万数千年から4-5千年前かな。きっとみんなのご先祖様もそのころ初めて日本に来たんだと思う。」
「だから意外と外国人もたくさん来ていたらしい。でも日本という国ができてきた1600年から1800年前ぐらいになると海も広がってきて外国から来る人も少なくなってきたらしい。それでも顔の白い髪の毛も赤かったり金色の髪だったり体の大きな外国人が日本に台風なんかで流れ着くこともよくあった。海外からくる外国人が少なくなって珍しくなり、そういう外国の人たちは日本人と体の大きさ、顔、髪の毛の色が違うから恐ろしく見えたんだろうね。こういう外国人が日本に来るとびっくりしたその土地の日本人に捕まったり追い出されたりして山の中へ逃げたんだ。捕まった人たちは殺されてしまう人もいたけれど多くの人たちはその土地のお殿様の命令でうちの一族の所へ連れてきてかくまうようにお願いされたんだ。流石に船が壊れてたどり着いた人達を姿形が違うからといって殺したくはないだろう。でも言葉も通じないし今よりも外国人のことを知らない街の人たちは怪物だと思い大騒ぎしてしまうからね。」
「でもご先祖様達は言葉が分かったの?外国人を知ってたの?」
「沢山の外国の言葉が喋れたし字も読めて書けたんだ。日本の普通の人たちと違って外国によく出かけご先祖様がずっと昔に住んでいた仲間の人達と仲良くしていたんだ。今のイスラエルやトルコ、イランあたりに今も遠い親戚がたくさん住んでいるよ。」
「ご先祖様といっしょに住んだ外国人の人達はどうなったの?」
「ご先祖様は外国の人達が国に帰れるように助けたんだよ。でもそれには時間がかかるから待ちきれない人達は、自分でなんとか帰ろうとした。でも船もないし食べ物もお金もない。だから村や街に出て盗もうとしたんだろうね。食べ物や船を。そういう事件が続いてその人達は鬼と呼ばれ嫌われたり村や街の人と戦って殺されたりしたんだよ。」
「国に帰るのを我慢して待った人達は帰れたの?」
「何年もかかったけど多くの人は帰れたんだ。帰れた人達は喜んで感謝してくれてご先祖様達と連絡したり行き来して仲良くなったんだ。今もときどき遊びに来たりみんなも外国のその人達に会いに行ったりしたよね。中にはご先祖様達との暮らしが楽しくて残って一族になってしまう人もいた。国に帰った人達からおいでと言われその国に行き家族を作って帰ってくる人も多かった。だからうちの一族ってちょっと顔が白人ぽかったりインド人みたいな顔の人もいるよね。」
「そうなんだぁ。ずっと昔からボクらはグローバルなんだ!」
「グローバル知っとんのか!」
みんなで大笑い。
「だから鬼は酷い人じゃなかったんだよ。嫌いになったらダメだよ。でもこの事は外で内緒だよぉ〜」
「分かったぁぁ〜!」
と子供達は大合唱。みんなでお雑煮とジュースでパーティーとなった。

そして私は山と人々を守る仕事を今日も続ける。

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