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日記:「書いてあるじゃん」と思ったことが、書いてない、そんなこともある。

こんばんは、しめじです。

今夜は、日記です。ちょっとした出来事から、現代文を「教える」側に回った時の難しさについて考えてみたいと思います。

生徒が質問に来てくれた。

まあ、こういう仕事をしていますので、「わからん! こまった!」という生徒が自分をあてにしてくれるのは嬉しいもの。

持ってきたのは、2010年のセンター試験現代文。
なんでも、地道に手に入るセンター試験の問題をコツコツ解いてみているそうです。

印刷した紙の余白には、「大体こういう答えになる」という記述解答のアウトラインがびっしり。これは国公立二次とかの記述問題にも確実に生きてきます。

ちなみに2010年の本試はこんな感じ。

検索したら東進のページが出てきたのでリンクを貼っておきます。
一番上の国語の、「問題」をクリックしたら問題を見ることができます。

生徒が質問してきたのは、

問3 傍線部「技術、通信、文化、広告、教育、娯楽といったいわば情報そのものを商品化する新たな資本主義の形態」とあるが、この場合、「情報そのもの」が「商品化」されるとはどういうことか。

という問題の答えについて。
よくよく話を聞いてみると、そもそもなんとなくピンと来ていない、とのこと。

ちなみにこの問題の答えは傍線部の直後に書いてあります。

ある情報が商品として売れるのは、それを利用するひとが他のひととは異なったことができるようになるからであり

の部分ですね。
つまり、「その情報を持っている人」と「その情報を持っていない人」の間に、出来ることの差異が生まれるものであれば、その情報は商品になる、ということです。

問題文を読まなくても、わかってしまう。

この問題、実は本文を読まなくてもわかってしまいます。
厳密には、「想像つく」ということになるんだと思いますが、

例えば、高校生がお世話になっている「塾」なんかは情報を商品化している産業の一つです。
学校だと、基本的には全員が同じ情報を得てしまいます。
でもそこで塾に行けば、より詳細な志望校の出題傾向やその対策についての情報を得ることができたり、より受験勉強に特化したノウハウを得ることができます。
あるいは、大規模な塾になれば、在籍生徒数の多さを生かして、志望動向などもつかむことができるでしょう。所謂「穴場」なんかも知ることができます。これは、はっきり言って我々には分からん情報です。
(高3の面談になると、「塾の先生から○○大学おすすめされた」って生徒が言ってきて、その大学名に「まじか!」となることもありますが、意外とそういうところにあっさり合格してきたりって本当にありますからね)

つまり、どこまで行っても相対的な競争である入試においては、他の人が知らない情報を知っている人が圧倒的に有利に立ち回れます。

投資の情報もそう。みんなが持っている情報だけで勝負したらいつまでたっても儲かりません。だってみんなも同じように動くわけですから。
今までの動向や、今自分が把握している情勢の知識を総動員して、他の人より早くこの後の動きを察知(つまり、「情報化」する)できた人が利益を手にします。

スポーツも、例えば野球であれば、他のチームが攻略法を見出していない剛腕投手の弱点を、あるチームだけが知っていれば、そのチームだけは勝率が高くなるでしょう。

というように、実は本文を読まなくても、「どういう意味かわかってしまうこと」って、結構多いんです。

教師の「読んだらわかる、書いてある」と、生徒の「読んだらわかる、書いてある」には、実際はとんでもなく大きな開きがあるときがある。

これを、やっぱり私たちは常に意識していなければならない、とつくづく思います。

ましてや、私たち国語教師は、硬い文章に触れたり、そもそも本を読んだりする機会が一般的なラインより上です。
あるいは、文を読んで抽象化したり、または具体化する思考にも長けていますから(訓練回数が違いますからね)、どうしても

「だって本文に書いてあるじゃん」

って短絡的に思ってしまいがちです。
でも、そこで止まってしまうと、噛み砕いて、生徒自身が自分の中で抽象化したり具体化する思考作業の手助けをしていくことは出来ない。
平べったく言うと、教えることができない、ということになります。

私が学部生の時に、教授が

「学校教師ってそもそもふざけてるくらいに矛盾した存在だよね。だって、出来ない子でも出来るようにするのが仕事のはずなのに、先生ってもともとその教科は出来てた、って人が多いから、出来ない子がなぜ出来ないのかも分からないし、出来ない気持ちも分からないんだから」

まったく、思い出すたびに耳が痛い言葉です。
言われてみればそうなんですが、ことあるごとにこれを思い出します。

では、今夜はこの辺で。

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